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おわりに

 

今回の調査研究においては、港頭地区における貨物の素通り化が進んでいる実態を踏まえ、約一年間かけて港頭地区において物流事業を営む事業者が抱える課題とそれを克服するための活性化方策について検討・整理した。

そこで明らかになったことは、荷主には港頭地区という概念そのものがもはやなく、港頭地区で物流事業を営む事業者に対する要望も、これまでのような単なるコスト削減、24時間荷役といったものにとどまらず、流通加工等の付加的なサービスの充実、小口配送機能の強化、コンサルティングサービスの充実といった物流全体を包括して請け負えるような事業者に転換していくことを求める段階にまで高度化しているということであった。

これまで物流業界においては、港頭地区は、良くも悪くも特別な存在で、内陸部の事業者が容易に参入できない地区であった。これが、かつては、港頭地区において物流事業を営む事業者の経営安定化に貢献し、外貿貨物の急速なコンテナ化にも迅速に対応できる素地を作り、また、業務の専門性を高め、どのような貨物にも的確に対応できる技能を構築するのに貢献してきた。しかしながら、最近では、内陸部においてもこれまで港頭地区が担っていた機能を果たすことができるようになってきており、港頭地区がこれまで有していた物流の結接点としての優位性が失われつつある。さらに今後、現在運輸政策審議会で審議されている規制緩和が実施され、事業参入規制が需給調整要件のない許可制となれば、内陸部の大手物流事業者が様々な物流ノウハウを携えて港頭地区に進出することが予想され、ますます港頭地区において物流事業を営む事業者の経営環境が悪化していくこととなる。

従って、今後は、本報告書にあげた諸対策を早急に実行に移していくことが求められるわけであるが、ここで留意しなければならないのは、これらの対策は、港湾において物流事業を営む事業者の方々が自ら取り組むべきものが中心なのであって、その他の関係者が取り組むべき対策はあくまで副次的なものに過ぎないということである。調査研究委員会でも指摘されたところであるが、大事なのは方策を報告書の形にとりまとめる作業なのではなく、方策を実行する行動力であり、行政による種々のポートセールスのための施策が実施されつつある現状においては、港頭地区において物流事業を営む事業者の方々が、仮に様々な困難があるとしても、自らの自覚と責任の下に、課題を克服すべく諸対策を実行に移していくことが今最も求められていることなのである。

神戸港には、他の港とは違って、物流事業者の間に団結と協調の伝統があるとよく言われるが、今まさにその伝統を活かす時である。本報告書をきっかけとする神戸港の物流事業者の取り組みが、他の港の手本となるようなものとなり、引いては我が国港湾における物流産業の発展の礎となることを願って本報告書を締めくくることとしたい。

 

 

 

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