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1. まえがき

 

鉄道システムは、近年、欧州を始め世界的な規模で役割が再評価されつつある。我が国の新幹線の開業に端を発した鉄道高速化の波は、欧州の鉄道先進国は言うに及ばず世界各国に及び、今後も鉄道高速化の追求が継続されていくものと考えられる。

一方、都市における道路交通の渋滞、環境汚染、省エネルギーなどの問題を解決するために、都市交通設備として路面電車が見直され、ライトレールとして、欧州および米国で新形式車両が次々に実用化されてきた。これらの車両の特徴の一つには、移動制約者・高齢者の方が利用し易いように床面の低床化がある。

近年欧州で開発されたこれらの新形式車両には、都市交通を対象としたものはもちろん、通勤車両や地方交通線を対象とした車両においても、さまざまな新機軸が試みられている。その一つは、車体の軽量化とともに、編成列車中の車軸数を減らすことであり、1軸台車を装備した車両が活用されつつある。これらの1軸台車は、貨車やレールバスに用いられた従来の2軸車両とは異なり、高速走行安定性、曲線旋回性能、乗り心地を重視した新世代の台車と考えられる。

以上の背景を基に、1997年度より、本プロジェクトが発足し、開発目標を第三セクター鉄道を始めとする地方線区用軽量内燃動車、都市内交通用ライトレール車両などとし、我が国に相応しい1軸台車の研究開発が進められることになった。昨年度においては、現地調査として、欧州で既に実用化をしている新世代の1軸台車および車両を中心として、デンマーク、ドイツ、オーストリア、ポーランドにおける開発状況と使用実態を調査し、これらを基に、1軸台車のあり方が明確になった。

本年度においては、昨年度から行われてきた理論解析の他に、試作した1軸台車を用いて、曲線走行が模擬できる台上試験装置を用いた曲線通過試験、さらに走行安定性の試験を行った。その結果、理論解析と試験の比較などにより、我が国の実状に最適な1軸台車の構造を探求することができた。さらに、次年度に予定されている本線走行試験を行うための試作台車の走行性能が明らかになり、最適化の道筋が求められた。本報告書は、これらの結果をまとめたものである。

 

 

 

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