日本財団 図書館


疫学、伝染、ワクチン

 

議長:P.ファイン博士

 

ワークショップの参加者は、次の4つの領域について話し合い、意見の一致を見た。

 

今日のハンセン病―型と傾向

近年世界のほとんどの国で発表される定例の「有病率」データは、「実施上の」諸条件(たとえば、確認方法の変化、診断や分類上の基準、治療期間など)の影響を強く受けてきた。そのため、その基盤にある疫学的な状況が正確に反映されないおそれがあり、実際に反映していない場合もある。そして疫学的な実状は、データが集計された期間の確実で明白な情報との関連でのみ理解されてきたのである。

 

ハンセン病の「有病率」、「発生率」「患者の発見」などのパターンや傾向を表そうとするなら、すべての図表や報告には、そのデータを集計した期間に行った実施上の条件(確認の方法、症例や分類の定義、治療期間など)を示した明確な説明をつけておくべきことを、私たちは勧告する。

 

ハンセン病の発症頻度やパターンは、人口の分布状態によって大きく変わってくる。国や地域、地方レベルによる、こうした不均一性は、単なる統計の数字では明らかにならない。統計を見るかぎりでは、実際の状況とは異なる状態を伝えてしまいがちである。有病率が特別高い地域を、できる限りその他のグループ・データと分けて考えなければならない。あるいは、それらの地域を加えることによって、分析を加える以前の粗データがどんなにゆがめられてしまうかを、少なくとも指摘しなければならないだろう。(たとえば、アジア、アフリカ、ラテンアメリカからのデータは、インド、エチオピア、マダガスカル、ブラジルを含むことで大きな影響を受けている。また、これらの地域の国家データは、このほかにも地域に特有な実施上・歴史上の要因に左右されている)。

 

ハンセン病の自然史に対して新しい見方をする

アメリカ合衆国南部に生息するアルマジロからハンセン病が伝染するという証拠は有力である。M.1epraeを「保有するのは人間だけ」というのはもはや正しくない。ハンセン病の自然史は霊長類と関連が深いと信じられているが、野生生物の調査や、霊長類との接触に寄る人間のリスクの研究も含めて、正確な研究を行うべきであろう。ハンセン病の根絶を本気で願うなら、この問題とも取り組まなければならない。

 

ハンセン病が風土病のように広まっている地域の住民の鼻腔や、環境サンプルにM.lepraeが広く存在しているという、最近のPCRに基づくデータは、ハンセン病の自然史を理解するために非常に重要な意味を持っている。これらの研究には、かなりの数の擬陽性が含まれているようである。信頼性を高めるためには、使用した分析評価の特異性を示すような厳密な比較研究が必要である(研究対象のサンプルの中に、病気が流行していない地域の住民からの無記名サンプルを混ぜて行うことが望ましい)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION