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ごあいさつ

◆アイデア(共生・尊厳・経済向上のための国際ネットワーク)は、ハンセン病患者・回復者を中心に、1994年に設立された国際ネットワークです。アイデアの会員は、すべての人びと、とくにハンセン病の患者・回復者が、人間として尊重され、希望をもって、意義ある人生を送ることができるよう、お互いに協力し合って活動しています。

◆1980年代初め、世界のハンセン病患者は推定1200万人以上とされていましたが、今日では、ほぼ100万人となりました。1998年5月、WHO(世界保健機関)は、複合化学療法(MDT)により全世界で1070万人の患者が治癒した、と発表しました。WHOは、西暦2000年を目標に、公衆衛生上の問題として、ハンセン病を制圧するための努力を続けています。

◆日本では、1996年4月1日、「らい予防法」が89年ぶりに廃止されました。特効薬の開発により、医学的にハンセン病が治癒できる病気になっていたにもかかわらず、「らい予防法」は、患者の強制隔離を正当化していました。この差別法が廃止され、“人間復権”3年目をむかえた今日でも、15カ所の療養所で暮らす入所者は5,200人、その平均年齢は71歳です。

◆ハンセン病は、伝染性のきわめて弱い、慢性の感染症です。乳幼児期に患者と直接、長期間接触し続けた場合をのぞいて、感染することはないとされています。今日では、MDTにより外来治療で、12カ月以内に治癒できる病気となりました。

◆しかしながら現在でも、病気は治癒したものの、後遺症や社会的差別のために苦しんでいる人びとは、全世界で数百万人にのぼります。国籍、文化、言語は違っていても、ハンセン病患者・回復者が、この病気を通して経験したことは世界共通であり、これから立ち向かう問題も共通しています。アイデアは、この病気にまつわる偏見、差別、隔離、拒絶、差別用語、汚名をなくすため、闘っています。

◆この展示は、世界各地で、これらの問題に果敢に挑戦し、尊厳をもって生き抜く人びとの姿を、回復者個人の言葉と写真をとおして、皆様に訴えるために企画いたしました。人間の尊厳は、だれもが生まれながらにして持つ権利です。社会が、ハンセン病の患者・回復者たちのこの権利を認め、ふつうの市民として受け入れる日がきたとき、人類は、あらゆる意味において、ハンセン病に打ち勝ったといえるでしょう。皆様のご理解とご支援をお願いいたします。

1998年6月

アイデア(共生・尊厳・経済向上のための国際ネットワーク)

 

 

 

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