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中央アフリカ共和国協力計画

1998年度調査報告書

(寄生虫対策調査)

 

辻守康

 

要旨

 

平成10年8月に第9回国際寄生虫学会が千葉市幕張において開催され、辻がその会長および組織委員長を担当したため、日程的に平成10年の年度内に中央アメフリカ調査団を派遣・実施することは困難であり、平成11年の1月から2月にかけて行うこととしていた。しかし平成10年12月に施行された中央アフリカ共和国の国会議員の選挙で与党と野党の議席数の差が一議席のみであったことから一部の地区で選挙問題がこじれ、平成11年2月には未だ政情不安が多少残されているとのことで、最終的に本年度の調査は現地日本大使館及び保健省と連絡の上、平成11年3月26日から4月3日まで辻が一人で現地に赴き実施した。

今回の主目的は平成10年3月に実施したバンザ村における調査で、日本に持ち帰り行った血液検査結果に基づく陽性者の治療と健康手帳の交付である。

中央アフリカ共和国では政治情勢が如何に変わろうとも笹川記念保健協力財団による調査が期待されているとのことで、今回も空港には保健省の第一地方医務局長のヤシポ医師および今回のカウンターパートとなるバンギー中央病院のヤヤ医師の他に日本大使館の黒沢医務官と実久派遣員が迎えに来ていた。

今回も地方には反政府の反乱軍やゲリラが出没する可能性があることおよび日程が短いことから、首都近郊のウワンゴ地区診療所での寄生虫症患者の治療とバンザ村での治療および健康手帳の交付とマラリア、フィラリア症を対象とした末梢血の血液検査を主体に行った。

ウワンゴ診療所では現地の看護夫が行った検査結果に基づき鉤虫症38名、蛔虫症15名、マンソン住血吸虫症10名、ビルハルツ住血吸虫症8名、マラリア35名に対して駆虫剤の投与を行った。またバンザ村では昨年の受診者の中ロア糸状虫および常在糸状虫陽性であった8名にジエチルカルバマジンを投与し、マラリア原虫陽性者8名にはクロロキンを投与した。さらにバンザ村では84名に健康手帳を交付すると同時に指頭血で厚層および薄層塗抹の血液標本を作製した。持参した健康手帳が不足したために、その他の24名は血液塗抹標本のみを作製し、健康手帳は来年度に追加交付することとした。これらの厚層および薄層塗抹血液標本は乾燥させて日本に持ち帰り、ギムザ染色を行って検鏡することとした。

今回の調査でも大統領府のザフィオ医務官を通じてパタセ大統領から感謝の意が伝えられ、また直接話合いをした保健大臣や保健省幹部、現地住民の人々から笹川記念保健協力財団に対し、深い感謝の意が伝えられた。なお川合大使を始め日本大使館の飯沢参事官、黒沢医務官などからも感謝されたことをご報告したい。

 

 

 

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