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I. まとめ

 

オリエンタル・ミンドロでは疫学調査(保虫宿主動物における感染、小学校児童ならびに一般住民の血清疫学、および降雨量データの収集)と超音波検査(治療とその後の再感染による肝病変の超音波画像上の変化)について精力的な研究が進められ、一方、ボホールでは中間宿主貝の調査と殺貝作業が実施された。

保虫宿主動物ではとくにラットに重点を置き、各村落で100頭以上が捕獲され、感染率はMalaboで27.1%(38/140)、San Pedroで20.6%(21/102)、San Narcisoでは10.8%(12/111)を示した。前年度の成績と併せてみると、小学校児童の感染率がとくに高かったMalaboにおいて保虫宿主動物の感染率も高い傾向が示されたのは興味深い。学童の血清抗体価(IgGおよびIgMクラス)検査では調査した全村落で新規の感染者が検出され、調査地域内で学童がいぜんとして感染のリスクに曝されていることが確認された。また、1995年以来の各村落の住居毎の住民の抗体陽性者を記録したスケッチマップを作成し、中間宿主貝の生息状況との関係特性を視覚的に理解しやすいようにした(図1-3)。さらにカラパンの測候所から1990年以降の月別降雨量のデータを入手した。

協力専門家として参加した千種雄一は、住血吸虫症罹患率の異なる4村落においてpraziquantelによる治療とその後の再感染による肝病変の超音波画像上の時間的変化について観察した。

ボホールでは7月31日と8月4日にSan RoqueのOmaguin palawan IIとBunaos palawan、San VicenteのApao Palawan、Gaspar boggy、Troceno boggy、およびKanggabok creekを調査し、ApaoのBoncales boggyにのみ少数の貝が生息するのを認めた。採集された3個の貝を圧砕検査したが、感染はみられなかった。ボホールに殺貝剤niclosamideはなく、8月5日、Boncales boggy(200平方m)において臨時雇い4名を含む全員による徹底した除草を実施した。

また、1999年2月4日、5日および12日には既知の全コロニーを調査し、Apaoのman made canalにわずか1個の貝の生存を認めたのみであった。2月15、16、17および18日には上記man-made canalをふくむ8個所を除草し、うち3個所には計9kgのniclosamideを散布した。

 

 

 

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