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者の気持ちをつかんで親身に相談にのっていただける補聴器店もあるが数は少ない。全難聴推薦店制度がいるかも知れない。

こうした役目を果たすのが、オージィオロジストと呼ばれる聞こえの回復のための専門家である。最初にあげた三つの基本的なニーズをかなえるために各種の技術者や社会福祉制度の活用までコーディネートしてくれる専門家であるが、わが国ではオージィオロジストを育てる専門機関も資格もない。97年末に言語聴覚士法が成立して、今春には第一回の認定試験を経て初めて「言語聴覚士」が誕生するが、全員が必ずしも聴覚の専門家ではないことが指摘されている。しかし、多くの経験と研鑽を通じて、日本でもアメリカのように、オージィオロジストが育つように期待したい。

 

3. 難聴者側の課題

 

わが国では、社会の理解の問題もあって、聞こえないことが恥ずかしいという意識が強く、補聴器を装用することをためらったり、装用していることを隠してしまう傾向が強い。これを打開するためには、補聴器ユーザーである私たち自身の正しい理解に基づく補聴器の装用のすすめが大切である。

私たちは、社会に対しては聞こえないと言うことがどう生活に、コミュニケーションに影響しているのか、何かが聞こえないだけではなく、どういうふうに聞こえたので分からなかった、聞こえなかったために何が起きたのか、具体的に語る必要がある。

しかし、私たちは、補聴器の限界も利点も一番知っているとは言えない。補聴器やフィッティングの技術の進歩は目を見張るものがあり、補聴援助システムも革新的なものが出ている。全難聴はこれまで、全国難聴者福祉大会の分科会や補聴学フォーラム、人工内耳フォーラム、人工内耳の実状と相談の会の開催を通じて、私たち自身の研鑽を積んできた。

さらに正確な知識と体験の共有を持たなくては、600万人の難聴者の先兵となれないのである。そのためには、系統的なカリキュラムを持つ「補聴器普及講座」(仮称)が必要である。全難聴もアメリカや欧州の難聴者団体と交流して、難聴者の「プロ」を生みだしたいものである。

耳鼻科医、オージィオロジスト、言語聴覚士、補聴器販売店、補聴器メーカー、補聴援助システムディーラー、ソーシャルワーカー、メディカルソーシャルワーカー、リハビリテーション技術者等専門家、関係機関との連携を深めて、世界でもっとも高齢化が進行している日本で補聴器の普及に努めたいと考えている。今年は国際高齢者年である。

 

 

 

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