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年間販売数50万台の約半分が販売店協会店を経て売られていますが、耳鼻科に先づ受診した人は26万台の中の18%に過ぎません。(その内の40%は身体障害者用で、これは手続き上、耳鼻科医の診断が必要)、また24万台は非協会員店で販売されていますが、その実体は、はっきりせず、聴覚障害や補聴器についての知識や技術もなく、検査設備も持たず、補聴器使用に関する説明も殆ど行わず、ただ補聴器を並べて、それを売るだけの店も少なくありません。また広告による通信販売も行われているため、購入したものの、自分の障害に適合しないため使えなかったり、購入者にとって不必要な性能を備えた高価な品を買わされるなどの被害があとを絶たない有様で、それが口こみで補聴器は雑音がひどく、声もがんがんひびくとか、頭が痛くなるとか、役に立たないなど様々な悪評が拡がり、一般人の補聴器に対するイメージを歪ませ、正当な評価を妨げ、それが我が国で20年来補聴器販売台数の伸びが米国に比べ著しく低い要因の一つにもなり、良心的な販売業者も被害を受けています。
補聴器業界でも1970年代米国業界が陥った危機に際して、免許制導入による会員の資質向上を図り乗り切った歴史を参考にし、10年前に全国補聴器販売店協会(JHDA)を発足させ、協会員に難聴者の補聴器装用に関する必要な知識、技術を習得させ、その資質の向上を図る目的で受講資格として(1)耳鼻咽喉科専門医の指導をうけており、更に(2)補聴器販売に3年以上従事した者に2日間の実技講習と1週間の講習を行い、試験合格者に補聴器技能者修了証書を交付しています。更に3年の実務を終えた希望者に試験を行い合格した人は「認定補聴器技能者」となります。そのためには2日間の講習を受けなければなりません。これは5年毎に更新の必要があり、また補聴器販売、修理などに関連した設備があり、認定補聴器技能者が常勤している店に対し申し出があれば審査の上、「認定補聴器専門店」という名称を与えています。更に最近では全国補聴器販売店協会と米国の補聴器協会(HIS)との間で情報交換や人的交流が始まっています。
従って販売店協会は、そのような店での販売に対し一定の責任を負うわけで、購入者に対し適正な販売が行われる保証を与えていることになります。購入者は自分の責任で、どのような所で補聴器を入手しようと自由ですが、認定補聴器専門店(本書末尾の資料参照)で購入することが賢明な選択といえます。

米国では連邦食品医薬管理局が補聴器販売者に次の8項目の何れかに該当する場合は耳鼻科医の診察を受けるように補聴器購入希望者にすすめることを義務づけています。1)耳痛 2)著しい耳垢 3)聴力障害が急速に進行している 4)1側性の突発性難聴 5)耳の奇形 6)現在耳漏がある 7)めまいやふらつきが最近おこった 8)会話音域での15dB以上の気骨導差の存在(医学的な聴力改善の可能性を意味する)。以上の場合は耳鼻科で先ず診察の上で治療や精密検査を受け、重大な疾患がないか確かめる必要があります。
以上の他にも自覚症状がなく診察、検査をして、はじめて分かるものもあり、補聴器購入を考える場合は、先ず耳鼻科を受診するのが第1歩です。そして補聴器外来を開設している病院、あるいは認定補聴器専門店へ紹介してもらうのが間違いの少ないやり方です。残念ながら図1に示しました通り、現状では耳鼻科と補聴器販売店との連係は不充分で身障用を除くと50万台の10%弱しか上に述べたルートで販売されておらず、先に述べたように補聴器について殆ど知識のない購入者は被害を受けています。この状況を改善するには、補聴器購入希望者に対する適正なルートへの窓口を多くすることが必要な条件です。
耳鼻科医は戦後日の浅い昭和24年(1949)国産補聴器の販売と同時に極く限られた施設ですが補聴器使用にかかわり始めています。同年の身体障害者福祉法は、その普及を促進しました。昭和30年(1955)耳の日が定められ耳に関する啓蒙運動が始まり、今日に及んでいます。昭和26年(1951)発足した難聴研究会は日本オージオロジー学会、更に日本聴覚医学会に引きつがれ、補聴器に関する基礎的並びに臨床的研究は一貫した主要テーマとして取り

 

 

 

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