日本財団 図書館


(3) 生物多様性とは

これまで自然に親しみ、自然を知るための視点ととて「多様性」という言葉を使ってきましたが、自然科学の立場から生物多様性とは何かを見ておきましょう。『Strix vol.13』(1994年,日本野鳥の会)に掲載された樋口広芳氏の論文「生物の多様性―その意味、仕組、進化、保護―」の要約を以下に抜粋します。

 

1. 生物の多様性を構成する基本単位は、「自然状態で自由に交配することが可能な個体からなる個体群」としての種である。それぞれの種は、繁栄上ほかから隔離されていることによって、独自の形態、生態、行動を発達させることができる。

 

2. それぞれの種は、ある特定のすみ場所や食物を利用することに特殊化した専門家である。したがって、それが利用しているすみ場所や食物に関するかぎり、ほかのものよりうまく利用することができる。

いろいろな生物が存在することの基本的な意味は、ここにある。

 

3. 生物の多様性は、種分化と適応放散をくりかえすことによって増大してきた。生物の進化とは、ある単純な生命体の誕生以来、地球という星あるいは宇宙の島を舞台に、いろいろな規模でくりかえし行われてきた超大規模な適応放散の過程および結果であるといえる。

 

4. 生物の多様性には限界がある。この限界をもたらしているおもな生態的要因の1つは、食物連鎖の中を流れるエネルギーの量である。高次消費者にはわずかのエネルギーしかまわらないため、消費者の食物連鎖は3段階か4段階でとぎれてしまう。もうひとつの生態的要因は、同じ栄養段階での近縁種間の競合である。生活上の重大な競合をおこさないために、近縁種間の特殊化、専門化は、どこまでも細かく進行することはない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION