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第1章 調査の概要

 

1. 調査の背景と目的

 

アジア域内貿易の活発化に伴い、輸出入貨物のコンテナ化に対応した地方港整備の進展、国内輸送コストの割高感などを背景として、九州域内の港湾では、高雄、香港、釜山、シンガポールなどの拠点港をはじめとしたアジア域内各地とを結ぶ外貿定期コンテナ航路の開設が進んでいる。九州圏はアジアに対して地理的に優位な条件を有し、特に九州西部経済圏は古くから交流が盛んな貿易港を有していることなどから、今後も航路網の充実による国際交流の拡大が期待されている。

九州圏の港湾には、北米航路、欧州航路などが一部を除いて就航していないため、これらの航路を利用する輸出入貨物は、これまでは神戸港など国内拠点港を経由して輸送される場合が多かった。しかし、近年のアジア域内航路の充実に伴い、高雄、香港、釜山、シンガポールなどのアジア拠点港においてトランシップ(積み替え)を行い、九州に発着するアジア域内航路と北米航路、欧州航路などを接続して輸送する形態が増加しつつある。

このような状況のもと、アジア拠点港におけるトランシップを活用し、九州と北米、欧州など世界各地と結ぶ輸送体系を構築することにより、荷主からみた輸送コストの削減やリードタイムの短縮が図られる可能性がある。ただし、九州を発着地とする輸出入貨物の大半がアジア拠点港を経由して輸送される形態となれば、九州域内の港湾に北米航路、欧州航路が寄港する可能性はますます低下する。このため、九州に直接寄港する航路の充実と、アジア拠点港の活用のバランスを図りながら、荷主の立場からみて最も効率的な輸送が可能となる航路体系のあり方を追求していく必要がある。

本調査は、こうした背景を踏まえ、九州西部経済圏を発着地とする外貿コンテナ貨物がどのような港湾を利用しているのか、特に北米航路や欧米航路の貨物がわが国や東アジアの拠点港でどのようにトランシップされているかについて実態把握を行ない、その要因を明らかにした上で、各輸送ルー卜毎の輸送コストやリードタイムなどの条件比較を行なうことなどにより、船社の寄港条件と輸送需要との関係を踏まえた効率的な航路体系のあり方を検討し、九州西部経済圏の国際交流の促進に資することを目的とするものである。

なお、本調査の対象となる九州西部経済圏の範囲については、長崎県、佐賀県を中心とするが、必要に応じて九州全域を調査対象とする。また、航路体系のあり方を具体的に検討するため、長崎港をケーススタディとして取り上げることを想定する。

 

 

 

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