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1. はじめに

 

社会の近代化が進むに従って電気および電子機器の利用が増大してお互いの干渉問題が重要になってきた。我が国では昭和の初めに高圧送電線のコロナ放電がラジオに妨害を与えることが問題となり、放送協会や電気の学会に電波障害対策の研究会が発足した。近年になって、あるロボットの製造会社で作業中の工員が近くに動いてきたクレーンのモータから発生した火花で機械が突然動き出し、巻き込まれて死亡した事件が発生したり、関西の私鉄で駅の近くで開業したゲームセンターから発生した妨害電波により、信号機が誤動作して電車が動かなくなった事件等が発生して、国会でもこの問題が取り上げられ電波障害問題がクローズアップされ、不要電波問題対策協議会(郵政省)、電波障害問題検討委員会(通産省)、情報処理装置等電波障害自主規制協議会(業界団体)などの対策会議が設置されて対策活動が始められるようになった。

国際的には早くから米国と欧州が中心となり、Electro Magnetic Compatibility(EMCと略す)として電波の共用性を推進してきた。EMCは電磁環境性、不要電波問題、電波障害あるいは電磁(的)両立性などに訳されてきた。EMC規格は国際規格と整合をとりながら国内規格が決定され、JISに取り込まれることになる。

 

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国際的に承認された機器が国際的に流通することからEMCは貿易問題ともなってきた。国内EMC規格を国際規格と整合させる必要が起きてきた。我が国でも上記の対策会議やCISPR国内委員会により国際的な対応をしている。EMCに通信機、テレビ、自動車、ロボット、医療機器など業界ごとの対策委員会が作られてきたが船舶関係の対応は比較的に遅れていた。

近年、欧州では共同体としての意識が高揚してきたのと米国に対する自立的立場から欧州内部でのEMC規格の制定に力を入れるようになり、欧州連合体(EU)加盟国が標準化されたEMC規格の製品のみを取り扱い製品の安全を保障させるEC指令を1985年に採択した。船用機器についてのEC指令は1997年2月17日より施行され、1999年1月1日から強制施行されるようになった。

EC指令は欧州国内問題に止まらないで欧州に機器を輸出している製品にも適用されることになり、我が国としても船用機器がEC規格に合格して、CEマーキングと言う保障をとることが必要になってきた。

国際的な船用機器のEMC規格はI E C 60945に専用品についての規格が制定されている。

船舶には電話、テレビ、パソコンなど一般の電子機器も含まれているがこれらはそれぞれの業界によりEMC対策がとられているので本委員会としては船舶専用品の中からナブテックス受信機、電力制御装置、スピードコントローラと油分濃度計の4機種をまず取り上げてEMC対策の検討を始めることになった。

本委員会では船用機器のEMCについて国際的規格とその動向についての調査と、具体的な国内製品の性能を計測することから今後ますます厳しくなると予想される船舶用電気電子機器のEMC問題に対処することになり本年度の調査検討を行った。

なお、本報告書の外に現場での活用を容易にするため試験詳細を集録して、調査研究報告書別冊を作成した。

 

 

 

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