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3.11 自動針路保持装置(オートパイロット)

自動針路保持装置は、ジャイロコンパスや磁気コンパスなどの船首方位センサーと接続して、操舵装置(舵)の動作を最小にとどめながら設定された針路方向に船首を保持するものである。

自動操舵装置(Automatic Pilots)は、その発達の歴史から自動操舵装置と操舵装置の境界が明確でなかったが、近年IMO、ISOで<図 3.11.1>のように定義され、名称も自動針路保持装置(Heading Control System)と改名された。

舵の制御方法には、ラダーサーボアンプに命令舵角を与えることにより舵を自動的に追従させるフォロアップ制御と、操船オペレータが舵角の動きを直接制御するノンフォロアップ制御の2つがある。

自動針路保持装置は、針路設定器で設定した方位に船首方位が一致するように指令舵角信号を計算し、針路を保持する。指令舵角信号の計算は一般的にPID制御方式が採用されている。この方式は指令舵角信号を、設定方位との誤差、誤差の微分値、誤差の積分値の和で出力する。

指令舵角=Kp×比例舵+Td×微分舵+Ki×積分舵

比例舵は誤差に比例した舵角で、例えば船首が左に10゜ずれていれば右に10゜である。微分舵は誤差の微分値に比例した舵角で、結果的に船の動きを止めるブレーキとして働く。例えば誤差ゼロでも、誤差がプラスに増加しようとすれば(船首が左に振れているので)、右に舵角を取ることになる。積分舵は誤差を積分した値に比例した舵の角度で、風などによる偏流成分を解消するように働く。

なお、前式で、Kp、Td、Kiは係数で、本船の特性に応じて設定する必要がある。通常は、公試運転時にメーカーが設定し、運航中に乗組員が様子を見ながら微調整する。

自動針路保持装置は、その船首方向やドリフト(風・潮圧差)を補正して自動航路保持装置(Tracking Control System)の一部として動作しても良いが、自動航路保持や手動操舵から自動針路保持へ切り替えた場合には、その時の船首方向を設定針路と見なして制御を始めることになっている。なお、自動針路保持装置には、舵角制限のための手段も設けられている。

 

 

 

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