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(1) 必要となる試料の量が多いため、篩い分けに時間を要する。(二人で約1時間)

(2) 供試体を形成する作業が容易ではなく、人的因子が入り易い。

この指摘を受けて現時点では、荷役現場における荷崩れ危険性評価試験法としては、1]試料を篩い分けし、2]所定の容器及び器具を用いて締め固めを行うことにより試料を容器に挿入し、3]試料の体積を所定の値にしてから(余分な試料を除去してから)、4]容器にいれたままの試料について円錐貫入試験を実施する方法を予定している。容器の大きさ等は今後の課題である。以下、この方法を「篩い分け円錐貫入試験」と呼び、容器を用いずに円筒形の供試体を形成する「実験室円錐貫入試験」と区別する。

これまで荷役現場で実施してきた篩い分けを行わない円錐貫入試験と比較すれば、篩い分け円錐貫入試験には、以下の特質がある。

[利点]

・ニッケル鉱の種類によらない荷崩れ危険性から見た円錐貫入力のクライテリアを設定できる可能性がある。

[欠点]

・篩い分けを行わない円錐貫入試験は鉱石のパイルに登って実施できる。そのため、試験を実施するパイルを代表する円錐貫入力が得られる。一方、篩い分け円錐貫入試験では10kg程度の試料を採取してこれを使用するため、例えば船倉内貨物全体を代表する円錐貫入力を得ようとすれば、複数の場所から試料を採取し、それぞれの試料について試験する必要がある。

即ち、篩い分け円錐貫入試験では、試料採取の問題が残るが、ニッケル鉱の種類(産地等)によらない円錐貫入力のクライテリアを設定できることがより重要であるため、荷役現場における荷崩れ危険性評価法としては、篩い分け円錐貫入試験を用いることにした。なお、貨物に関する代表値を得るための試料の採取方法については、荷送り人、荷受け人ともに充分な知見を有すると考えられるため、本研究では扱わない。

 

2.5. 研究計画の変更及び研究の流れ

以上の通り、本年度の荷役現場における実験の結果に基づき、最終的に開発すべき荷崩れ評価試験法は、「篩い分け円錐貫入試験」を基礎とすることにした。この試験は、試料の締め固めを行うための容器及び締め固め装置が必要となるため、本年度は実施できなかった。また、昨年度船舶艤装品研究所で、また、本年度荷役現場において実施した「実験室円錐貫入試験」では、容器に入れた試料を用いる「篩い分け円錐貫入試験」よりも円錐貫入力は小さくなると考えられる。よって、円錐貫入力のクライテリアの設定ためには、「実験室円錐貫入試験」を実施しても意味が無い。そのため、当所予定していた「実験室円錐貫入試験」は実施せず、これに変えて、篩い分け円錐貫入試験の試験方法の検討のための予備試験を実施した。

荷崩れ危険性に基づく水分値のクライテリアを決定するための一面剪断試験等は、本年度に実施した。実験に用いた試料は、最大粒径19mmのもの等を保管してあり、次年度に仕様を決定した上で篩い分け円錐貫入試験を実施することにより、円錐貫入力のクライテリアを決定する予定である。現時点で考えている研究の流れを図2.5.1に示す。

 

 

 

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