そのうちサラリーマンの配偶者(被扶養者のみ)を除く者は第1号被保険者と呼ばれ、国民年金の保険料を納付しなければならない。第1号被保険者は1997年時点で約1900万人いた。そのうち保険料を滞納している者が16%前後(約300万人)、低所得等を理由に保険料免除となっている者が18%弱(約330万人)いた。さらに住民票未登録等で国民年金に加入していない者が95年10月時点で158万人いたと社会保険庁は推計している。滞納者・免除者・未加入者をあわせると800万人近くになる。本来、第1号被保険者となるべき者の4割近くが国民年金の保険料を納付していない。これが最近の実態にほかならない。
このドロップアウト「4割近く」という割合は全国レベルの計数である。沖縄県では滞納者の割合がすでに30%に達しており、免除者・未加入者をあわせると実に62%に相当する人びとが国民年金保険料を納めていない(96年度)。
なお免除率は91年度以降、徐々に上昇している。これは学生を同年度以降、強制加入としたからである。滞納率はかつては5%未満であった。それが86年度に17.5%に急上昇した主な理由は、それまで任意加入だったサラリーマンの配偶者(滞納者はほとんどいなかった)が制度改正により第3号被保険者となり第1号被保険者グループから切り離されたからである。滞納率はその後、やや低下気味に推移していたが、92年度を境にして再び上昇基調に転じている。
国民年金の保険料は97年度が月額1人1万2800円、98年度は1万3300円となる。その後も毎年、少しずつ引き上げられる予定である。それにあわせて免除率や滞納率は今後とも上昇し、「皆年金」の空洞化はさらに進むおそれが強い。
国民年金の場合、保険料免除となったり保険料を滞納したりしても、その分の保険料を追納することができる。したがって前述した800万人弱のすべてが無年金となったり、ごく少額(生涯免除の場合、60歳受給の年金額は月額1万3000円程度)の年金受給者となったりするわけではない。現に保険料免除者の4割強は保険料を追納する意思があるといっている。学生の大半は卒業と同時に年金保険料を自動天引されるサラリーマンとなるだろう。また滞納者であっても低所得者ではない人が少なくない。本人所得を見るかぎり国民年金の保険料を納付している人の所得分布とそれを滞納している人の所得分布に大差はない。滞納者の少なからぬ部分が固い年金不信を胸に秘め、いわば確信犯的に保険料納付をサボタージュしているのである。現に滞納者のうち30〜44歳層の5割強が「国民年金をあてにしていない」といっており、滞納者の約3分の2が民間の生命保険に加入(さらに滞納者の2割は民間の個人年金に加入)している。無年金になったからといって、それが生活保護に直結するわけでは必ずしもない。