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1.運動強度と心拍数(脈拍数)

 生体が運動を行うと運動の強さに応じて心臓はときには軽く、ときには激しく鼓動する。運動中の心拍数(脈拍数)が運動 の強さと何んらかの関係が認められれば、それを手掛りとして、運動中の生体の負担度をとらえることができる。また、生体 負担の上限を知り、運動中の心拍数から残された余裕力を推測することができる。
 運動中の生体の負担度が知れれば、運動による危険な場面をある程度避けることができようし、一方、運動処方による負 荷強度を心拍数によって示すことができるし、観察者のみならず、運動実践を行っている自身にとっても管理が容易にな るであろう。
 幸いなことに運動強度と心拍数との関係は極めて簡単であり、一次的関係なのである。
 運動強度を走行運動でいえば走速度ということになる。体力の異なる2者に同一の走速度で走らせても同一の生体の負 担度を示すわけではない。体力の劣っている側がより大きな生体の負担をするわけであり、高い心拍数を示すことになる。

2.心拍数と酸素摂取量

 酸素摂取量と心拍数との間には次の関係がある.
 酸素摂取量=(1回拍出量)×(心拍数)×(動静脈血酸素較差)
 運動を行うことによって1回拍出量も動静脈血酸素較差も変化が起こる。1回拍出量は心拍数が約120拍/分に達するとほぼ 最大値に達してしまうのである。したがって約120拍/分から、最大値近くまでは心拍数と酸素摂取量との間には直線関係が認 められる。このように両者の関係から、運動強度と酸素摂取量との間には直線関係が成立するが、酸素摂取量には上限があるの で、最大値近くになってからの両者の関係は運動強度がさらに増しても酸素摂取量は増加がみられず直線関係はずれてくる。 このように心拍数は酸素摂取量を代表する指標ともいえよう。とすれば、心拍数による運動処方は酸素摂取量によるそれに代 行できるものであり、心拍数が簡易にとらえることから実用的であるということができる。

3.心拍数による処方の問題点

 a)性:同一運動強度においては女性の方がおよそ10拍/分ほど高くあらわれる。
 b)年齢:加齢に伴って最大心拍数は低下してくる。デービスによれば、0歳を210拍/分として、10歳年をとるごとに6.5拍/分低下するという。したがって、60歳であれば約170拍/分となる。
 c)体温:体温が1度上昇すれば心拍数は10拍/分ほど高くあらわれるという。
 d)個人差:同一運動強度または最大酸素摂取量の割合で運動を与えた場合、標準偏差でおよそ15拍/分の差がみられる。かなり トレーニングされた同年齢の若者でも約10拍/分の標準偏差がみられるのである。
 e)上・下肢運動:同一酸素摂取量を示す運動をもって上肢運動あるいは下肢運動をさせたとき、前者において心拍数が 約20拍/分高かったという。(ボカック)


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