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研究方法
 1.調査対象
 ヒトの健康や体力は、遺伝的要因と環境的要因によって影響されることはよく知られている。特に経年的条件を考慮する場合には環境的要因は重要であると考えられることから、数年前から松井と桜井(1991、1993)6,7)が調査研究を進めてきた地域と同じくした。すなわち、富山県南西部の庄川町(人口約7,500人)に住む60歳以上の高齢者を対象とし、アンケート調査と体力測定を行った。なお庄川町は庄川が山間部から富山平野に流れ出る扇頂(扇状地の開始)に位置し、農業や木工業が主要な産業である4,5)。各被検者には、町内会の世話人から本研究の主旨を説明していただき、それに同意していただいた後にア ンケート調査および体力測定を実施した。なお体力測定は平成9年9月6日から8日の3日間実施した。

 2.アンケート調査
 体力測定を実施する約2ヵ月前にアンケート調査用紙を配布し、現在の健康状態、食習慣、運動習慣、生活習慣および運動やスポーツ環境などについて回答していただくよう依頼した。

 3.体力測定
 健康な60歳以上の高齢者58名(男性33名、女性25名)を対象に体力測定を行った。測定項目は、身長、体重、安静時血圧、安静時心拍数、肺活量、長座位体前屈、背中握手(右手上と左手上)、閉眼片足立ち、開眼片足立ち、反応時間、全身反応時間、シャトルウォー キングおよび呼気中亜酸化窒素濃度である。
 安静時における血圧と肺活量は、水銀血圧計と聴診器および肺活量計(日本光電社製)を用いて測定した。
 柔軟性の測定は、被検者が測定中にバランスを崩し転倒する可能性も考えられることから、立位体前屈の測定と同じ測定装置を用いて長座位体前屈の測定を実施した。また被検者に対し体育館の壁に5cm間隔でラインを引いた校正用の用紙の前に立 ち、各被検者の背中で両手が触れるあるいは握手するように要請し、その状態をカメラで撮影した。現像したフイルム(焼きつ けた写真)から、左右の手の先端の距離を測定した。もし左右の手が互に触れていない場合には触れていない距離をマイナス、 触れているあるいは重なっている場合にはその距離をプラスで表わした。なお右手を上にした時と左手を上にした時の2回測定した、光反応時間と全身反応時間は、反応時間測定装置(竹井機器社製)を用い、それぞれ3回測定し、平均値を求めた。
 持久性テストとして、木村ら(1996)2)の方法に習いシャトル・スタミナ・ウォークテスト(Shuttle Stamina Walk Test:SSTw)を 行った。すなわち、体育館のフロアーに10メートルの距離をおいて両端にポールを立て、その間の床面に2m間隔で距離計測のた めのマーク(ビニールテープ)をつけた。被検者には、スタートの合図とともに無理をしない範囲でできるだけ速足で歩きなが ら、一方のポールからもう一方のポールを回って折返すことを3分間継続させ、この間の歩行距離を計測した。なお測定におい ては、2ないし3名同時にスタートさせ、検者が30秒毎に時間を読み上げ歩行中の被検者に時間経過を知らせた。それぞれの体力測定項目の平均値と標準偏差を求めた。

 

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