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 研究方法
 1.対象
 本研究の対象者はフルタイムで週4日以上勤務している40歳以上の勤労女性56名であった。これらの女性は、各分野で指導的な立場にある管理職や大学教官を中心とした勤労女性グループを中心にロコミで集った会員制水泳トレーニング集団(118名) であった。実験の開始前に、全ての被検者から、実験の内容を詳細に説明した後、個人個人から実験参加の同意を得た。また、本研究の全てのプロトコルは国立健康・栄養研究所の倫理委員会の審査を経た。

 2.トレッドミルによる最高酸素摂取量の測定
 血液検査、血圧検査および安静時の心電図に異常が無いことを確認したのち、専門医による運動負荷実施認可が得られた被検者を対象として、トレッドミルを用いた乳酸性作業閾値および最高酸素摂取量の測定を行った。前日、十分睡眠をとった被検者を対象とした。まず、5分間の立位安静後に、安静立位における呼気ガスを採取した後、被検者に角度0度のトレッドミル上を1分間60m の速度で歩行させた。同一速度での歩行時間は4分とし、4分ごとに10m/分ずつ120m/分まで速度を漸増させた。それ以後はトレッ ドミル速度120m/分での走行とし、トレッドミルの角度を3分毎に3度から1.5度ずつ上昇させることにより運動強度を漸増させた。
 運動の終了は、?被検者がこれ以上歩けないと申告したとき、あるいは?心電図などの異変や、トレッドミル上の歩行でバラン スをとることが困難になり走行の危険性が観察され、検者がこれ以上運動の継続が不可能と判定した場合などで、その段階の運 動負荷における血中乳酸濃度が4mM以上であった場合とした。関節痛などで運動を停止した場合は本研究の分析の対象としな かった。各負荷段階の終了2分前あるいは1分前から採気を行い、酸素摂取量を測定した。採気はダグラスバッグ法で行い、呼気中 の酸素および二酸化炭素濃度をミナト社製のガス分析器で測定した。呼気量は品川製作所製のガスメーターで定量した。運動時 に観察された酸素摂取量の最高値を最高酸素摂取量(Peak oxygen uptake)とした。各負荷の終了直前に指尖から採血し、YSI社製の YSI 1500 Sport L−ラクテート・アナライザーで血中乳酸濃度を瞬時に測定した。

 3.骨密度の測定
 中高年女性の骨密度は、多くの生理学的因子に影響を受けるが、特に閉経後の女性ホルモン濃度の分泌低下は、他の因子と比 較できないほど大きな影響を及ぼす5)。特に、本研究の被検者のように、閉経前、閉経期、閉経後の状態である被検者を含む場合は、 別個に分析しないと運動自体の骨に与える影響をみることができないと推察される。そこで、本研究では、骨折や骨の変形のな い閉経後の女性22名を対象に2年間の水泳トレーニングが骨密度に与える影響を観察した。これらの女性を水泳トレーニング の参加頻度で2つの群に分けた。トレーニング群は2年間の週平均参加回数が1.0±0.3回(n=8,年齢:59±5歳)、対照群は、週平均の 参加回数が0.3±0.2回(n=10,年齢:62±4歳)であった。骨密度(g/cm2)の測定はノーランド社製のXR-26を用い、DEXA法により行っ た。測定部位は腰椎(L1−L4)の平均値および大腿骨頸部とした。

 4.水泳トレーニング
 水泳トレーニングは25mプールで行った。実施時間は毎週月、水、金曜日の午後6時〜8時であった。実際の水泳運動はその中の 正味1時間程度であった。水温は29〜30℃に維持した。毎日、2名の水泳専門のインストラクターが水泳指導を行った。「泳げない グループ」、「25m泳げるグループ」、「それ以上泳げるグループ」、「かなり泳げるグループ」4群に分けて、それぞれに指導者 がついて別々に指導した。代表的な1日の泳距離はそれぞれ750m、800m、1200m、1650mであった。トレーニング中の最高心拍数は 160拍/分程度であった。

 5.統計方法
 群間の平均値の差を対応のあるt-testで評価し、危険率5%以下を有意とした。


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