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 高齢になると重心動揺の増大や片足立ち保持時間の短縮などで示されるように、姿勢保持能が低下し転倒し易くなる、 と言われる。転倒による骨折が原因で長期臥床を余儀なくされる場合も稀ではない。ヒトの立位姿勢は、?随意運動、?迷路、 視器、自己受容器からの立ち直り反射、?抗重力筋緊張、?小脳の働きによる頭部、四肢,躯幹の共同運動により制御されてい る10)。加齢にともない閉眼片足立ち時間の短縮やロンベルグ比(閉眼時と開眼時の重心動揺軌跡長の比)が増大するのは、高 齢になるほど立位姿勢維持における体性感覚系入力情報による寄与が低下し、視覚系、前庭迷路系の情報に依存する割合が 増すためと言われる6)。このような現象は、加齢にともなう抗重力筋群の協調性の低下や老年性筋萎縮などに起因する1)、と 考えられている.Whippleたち11)は,よく転倒する高齢者の脚筋群のピークトルクやパワーが有意に低下していることを報告 している.
 高齢者の寝たきり予防の目的から、日常生活における積極的な身体運動が推奨されている。また、高齢者の姿勢調節能力や 筋力の低下を把握するため片足立ち時間や握力の測定が繁用されている2,4,5)
 最近、両足立位姿勢による重心動揺測定の結果が報告されているが、これと片足立ち時間との関連や閉眼と開眼による重 心動揺および片足立ち時間との関連などは明らかにされていない。そこで、本研究では19〜21歳の健康女性を対象にして、開 ・閉眼片足立ち保持時間と開・閉眼両足立位姿勢維持時の重心動揺解析結果との関連を調べた。また、これら姿勢調節能力 指標と過去の運動経験との関連なども調べた。



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