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 [宮村班] 富山県庄川町に在住する60歳以上の高齢者328名を対象にアンケートと体力測定を行った。その結果、1)ほぼ全員が 定期的に健康診断を受診し、食生活においてはほとんど好き嫌いをせずに毎日3食摂り、6〜7時間の睡眠時間を確保するように していた。2)日常生活では出来るだけ体を動かすように努力していた。3)58名を対象に体力測定を行った結果、閉眼片足立ち と長座体前屈の成績がよい傾向にあった。4)シャトルスタミナウォークの距離は、これまで報告された結果とほぼ同じであった が、呼気中亜酸化窒素濃度とは有意の関係は認められなかった。
 したがって、この地域に在住する高齢者の多くが日常生活において食習慣、運動習慣、生活習慣などに留意することにより、各 自の健康や体力の維持あるいは向上に努力していることが推測された。

 [淵本、金子班] 高齢者の歩行における重心動揺と脚の動きの特徴を探るため、62〜87歳44名および18〜26歳36名に自由歩行 を行わせ、側面と正面からビデオカメラで撮影して三次元的に分析した。その結果、1)歩行速度は男女ともに若年群より高齢群 が遅く、その原因は歩調ではなく歩幅の狭さにあったが、この歩幅には身長差が影響していた。2)同一速度で比較した歩幅と歩 調は、身長差を考慮すると、高齢―若年間で差がみられなかった。3)スイング足の最小爪先高は、男女とも高齢群の方が有意に高 く、身長差を考慮してもこの傾向は変わらなかった。4)歩幅は、女性の場合に高齢群の方が若年群より明らかに狭く、足向角は男 性の場合に高齢群の方が明らかに大きかった。5)重心の上下動は、男性の場合、同じ歩行速度で比較すると大きかった。

 [木村班] 高齢者の立位姿勢保持能およびその低下防止策を論ずるため、60〜90歳の高齢者209名を対象として、平衡機能と歩 行能との関連を検討した。その結果、1)対象者の平衡性指標および歩行能には明らかな加齢変化が認められた。2)歩行速度と歩幅 はより動的な平衡機能と有意な相関を示した。3)歩行速度および歩幅を目的変数にした重回帰式において、下肢筋力は男性では 唯一有意な説明変数として、女性では最初の説明変数として取り込まれ、その寄与率は最速歩行が自由歩行より高かった。
 以上の結果から、高齢者における歩行能と平衡性指標との関連は筋力を介在するものであり、高いバランス能や力強い歩行の 保持には、筋力低下をできる限り少なくすることの重要性が示唆された。


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