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2.包括的ケアプランと経過

 診断から亡くなるまでのほぼ1年に及ぶ経過のうち,ホスピス初回入院より2ヵ月間の経過を見てみる(表6)。ホスピスに入院してから1週間後に数カ月ぶりに入浴し,発病以来制限していたコーヒーも飲まれるなど,元気な頃の生活のペースをわずかながら取り戻された。そしてホスピスでの生活にも慣れ,次の1週間で一生外すことはできないといわれていた経腸栄養を中止し,栄養補給ルートを経口摂取のみに絞る段階を経て,食事が1日1400kca1平均と安定してとれるまでになった(図4)。この時点でホスピスに入院してから25日が経過しており,インシュリン使用量のチェックと血糖コントロールのために始めた食事エネルギー計算の中止をナースが提案したが,Mさんはこれに対して血糖の自己管理をさらに続ける意志を表明している。食事チェックに伴うストレスを考慮して,血糖のコントロールは現状維持でよいと考えたスタッフが,患者さんのさらに向上を望む姿勢に気づきこれを以後も支持していく方針を確認している。
 そして,待ち望んだ在宅での時をもち,この5ヵ月間(1997年11月7日〜98年4月13日・157日間)で体重も在院中よりさらに3kgふえ,体力,気力とも充実した時期を過ごされた。初回の入院から退院までの約2ヵ月間の患者の食事に関わる訴えを追うと,入院時「環境が変われば食べられるのではないかと思って」ホスピスに来られ,1週間後「食べ物が出された時,無意識に手が出るようになりたい。病気になってから制限ばかりしていた」と,26日目に「こんなふうに食事に対してうるさく言うのは,それだけ調子がよいということなんだね」,2ヵ月目には,「できれば制限なくいろいろなものを食べてみたい。せっかく今はおいしく食べられるので」との発言も見られた(表7)。

 

 

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