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まえがき

財団法人ライフ・プランニング・センター理事長 日野原重明

 日本における最初の独立型ホスピスとして,財団法人ライフ・プランニング・センターがピースハウス(ホスピス)を設立したのは1993年であった。その後現在まで,日本では病院に併設された緩和ケア病棟に2つの独立型ホスピスを加え51カ所の施設がホスピスとして認定されるにいたり,緩和ケアという概念はわが国においても次第に定着してきたように思われる。
 ピースハウスホスピス教育研究所は,ピースハウスの計画当初から,ピースハウスの教育・研究機関として,わが国の緩和ケア医療に貢献すべきことを使命として付設したものであるが,現在その活動も軌道に乗り,日本においてもっとも活発に教育活動を展開している施設のひとつといえよう。

 本誌によって1998年度の活動を報告する。
 教育プログラムとしては,終末期ケアに参与する専門職やボランティア養成のための各種講座を実施しているほか,毎年,海外からホスピス緩和ケアの専門家を迎え国際ワークショップを開催している。今年度も報告にあるごとく,全国から緩和ケアに関心をもつ多くの参加者を迎え,たいへん有意義な会を実施することができた。また,ピースハウスの2階に設置されている教育研究所の利点を活用し,臨床に即した研修を実施することができ,好評を得ている。特に,日本財団からはホスピス臨床ナース養成のために多大な援助をいただき,ホスピス緩和ケアヘの取り組みを準備している施設・団体のナースを対象にした研修プログラムもでき,育成に着手したところである。
 院内教育としては,事例検討会やホスピスケア研究会が定着し,成果がみられた。また,新人オリエンテーションから始まるレベル別教育プログラムの策定を始めた。研究活動についても「研究活動を考える会」を発足させ,本格的な取り組みを開始した。これらの活動については次年度に期待したい。

 ピースハウスは年々入所者が増しており,それに対応してサービスの維持・向上が期待されている。看護をはじめ各領域のスタッフの負担は大きくなってきたが,チームワークの充実によってそれに十分に応えているのはたいへん喜ばしい。
 さて,ピースハウスでは今年度最後の事業として1999年3月に訪問看護ステーションを開設するが,この活動が軌道に乗ることによって,広義の意味で“ホスピス緩和ケア”の一貫した教育・研究の基盤が確立するものと思われる。今後,ピースハウスホスピスにおいて,臨床,教育,研究の三つの分野が有機的かつバランスよく発展していくことを願いたい。

1999年3月

 

 

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