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図31 Valsalva試験における心拍数と血圧の変化

 実は,この手法は日常臨床でよく用いられており,たとえば狭心症を起こしたとき,頸動脈洞のマッサージによって脈が遅くなり,また血圧が下がって発作が治まることがある(図29)。この効果はきわめて迅速に現れ,数秒で奏効するので,ニトログリセリンの舌下使用よりも速い。これはまた,発作性上室性頻脈に対しても同様によく施行される手技でもある。
 この方法は,患者を仰臥位にして顎をやや上方へ,そして圧迫する側を反対の方向へ軽く向ける。甲状軟骨の上縁で胸鎖乳突筋と交わるところに頸動脈洞があり(図30),ここで触れる拍動を確認してから,拇指または示指の指腹でマッサージするようにして,頸椎の方向へ圧迫する。必ず一側のみマッサージし,両側同時に行ってはならない。マッサージの効果は心音の聴診か,心電図上の心拍数の変化で知ることができる。撓骨動脈の触診では,同時に起こる血圧下降のために脈が触れにくくなり,不正確になる。

 b)Valsalva試験
 もう一つの方法は,Valsalva試験で,これは息を吐き出したところで,グッと息こらえをする。わかりやすくいえば,息を吐き出したところで鼻をつまみ,のどのところで息を止めて約15秒間気張ればよい。

 

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