日本財団 図書館


3.血管系の構造と機能

 血管系の機能と構造を考えるさいに,先に述べたW/L比をもう一度復習してみよう(図5)。
 まず,大動脈では,壁の厚さと内腔の関係が,大体1対5〜7ぐらいで,内径に比して壁が薄い。通常の筋肉へいっている血管では,この比が大体1対5ぐらいになる。一般に大動脈では拡がることはするが,積極的に縮まることなく,これに対して,W/L比の大きい筋肉の多い動脈になると,積極的に収縮し,内腔と壁の比が1対3くらいに大きくなる。従って,血管壁の平滑筋が収縮するとき,弾性系の大動脈ではこの比はほとんど変わらないが,筋肉系の血管ではこの比が著しく大きくなる。このようなW/L比についてはすでに述べたが,それらの構造と機能の関係についてさらに詳しく考察してみよう。
 大動脈はゴムのように伸縮の大きい弾性線維と,伸び縮みしない膠原線維から成っており,ゴム管の外側に布のおおいがついた構造にたとえられ,それぞれの構成要素の量によって,非常に伸びやすい血管になったり,非常に縮まりやすい血管になったり,いろいろと血管の機能が変わってくる。
 細動脈では,ほとんどが収縮する平滑筋で占められているので,少しの刺激が与えられると,内腔は著しく狭くなり,壁と径の比が1対1ぐらいに増大する。毛細血管は,酸素と炭酸ガスの交換や,その他栄養物と老廃物の交換が行われるところなので,薄い内皮細胞と,それを包んでいる基底膜だけになり,内径が変化することはない。その先の細静脈には平滑筋が多く,ここは交感神経の支配密度の高いところなので,著しく収縮する。
中等度の静脈にも非常に神経の支配が多く,ここは血液貯留槽なので,機能的にみて神経支配が多いことは重要な意味をもつ。上大静脈や下大静脈は右心房への導管のようなものなので,単なる通り道であり,その意味では血行力学的にあまり大きな役割はもっていない。


 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION