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私たちはその時,その場でできることをする者であると同時に,一つの積極的な役目を担った者でもある,ということを言いたいのです。
 ハイデルベルグホスピスグループを紹介するためのパンフレットを私たちも参加して作ったのですが,その中に次のような内容の一文があります。

「孤独の不安が,私たちが“そこにいる”ということを通して和らげられるような,そんな者でありたいと願っています」
この文章は,宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を思い出させます。
「東二病気ノ子供アレバ 行ツテ看病シテヤリ  西ニツカレタ母アレバ 行ッテソノ稲ノ束ヲ負イ  南二死ニソウナ人アレバ 行ッテコワガラナクテモイイト言イ,」

 私たちが何気なく読み流しているこの詩の中の文章が,ホスピスボランティアの役目を簡潔に言い表した一文であると思います。「怖がらなくてもいい」ということ,そう言えるようになることがホスピスボランティアの道です。どんな職業を通してでも得ることができるはずの,専門家に共通の目を得て初めて,「怖がらなくてもいい」のひと言を自分の言葉として口にすることができるようになるのだと思います。

いのちの質を問う

 次にホスピスボランティアがドイツ社会,および人間社会でどのような位置を占めているかを考えてみました。ホスピスボランティア運動という社会の中で,何が動き始めたのでしょうか。家庭で最後の時間を過ごしたいという人や,ホスピス病棟で最後を迎える人間の数は,ドイツにおいてもまだ非常に限られています。イギリスで生まれたホスピスが,アメリカで「死の家」と訳されたり,ドイツで「死ぬクリニック」と訳されたことが障害になったとも言われます。

 

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