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それは時計を見ながら在宅介護をすることを余儀なくされているヘルパーさんや,主に薬の処方をするために来る医者たちには,時間不足のためにできない仕事です。さらに,告知問題は,問題を多局面からとらえながら,問題の行き着く底にまで目を届かせて初めて,答えを出せる難問です。そのような目を養いもった専門家にはどうしたらなれるでしょうか。
 そのための特別の道はありません。別の表現をすれば,そのための道は至るところにあります。それは大工の道,庭師の道,医療者の道のいずれにおいても,ひたすらやっていればいつの間にか身についている専門家共通の目ということができます。ですから,ボランティアグループには同じ職業仲間ではなく,さまざまな専門家が一つ所に集まってきます。それがボランティアグループの大きな魅力です。「予想」とか「予備知識」とか,まして「偏見」という名の“しみ”のついていない目をもつたいせつさを認識することがホスピスボランティア教育の課題であり,その目を養っていく場所がホスピスボランティアの仕事場です。

ボランティアに課せられるもの

 ドイツのホスピスボランティアに見られる専門性は,かなり高いといえると思います。すなわちホスピスグループに属する者は,ここに述べてきました準備教育を受けた後で,一つの目的を果たす社会活動の参加者として,その専門性を活動チームから期待されます。チームには緩和医療を行う医師,ソーシャルステーションから来る専門介護者,ソーシャルワーカー,聖職者がいます。それに,最近はわずかながら有料の隣組有志グループもチームに参加しています。
 ドイツでときどき耳にすることは,「私たちホスピスボランティアは人手不足の隙間を埋める者ではない」という発言です。

 

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