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「私が一緒にいる」というそのメッセージを受けて,彼は40年間荒れ野を自分たちの民族を連れてさまよい,カナンという乳と蜜の流れる故郷へ向かったのです。しかし,その旅はたいへん苦しいものであり,自分が命がけで救い出した民にもたびたび裏切られる。神が怒りを発してその民を焼き払おうとすると,今度はモーセは身を挺して「殺さないでほしい」と神に願う。そういう彼が目的地の乳と蜜の流れるカナンを眺める山に登らされて,あそこへ行くのだけど,おまえはここで死ぬのだと知らされる。彼は,それで自分の後輩のヨシュアという男にカナンヘイスラエルの民を連れて行くという役割を委ねながら死んでいく。モーセは目的達成寸前で死んだ。
 そうしてみますと,彼の最初の召命のときに見た燃える芝という現象は,まさに彼の人生を表すようなシンボルだったのではないか。つまりたいへんな苦悩の中で彼は召されていくのですが.その燃え尽きることのない火に燃やされながら,火によって精錬されて純金が出てくるような,そういう生涯を送ったともいえるのです。
 きょうお話ししたいのは,皆さんの中にある個人的な求めや叫びが大きな地域,国,アジア,もしくは世界中のいろんな苦しんでいる人の叫びに共鳴するようなセンスをもつボランティアであってほしいということなのです。

日常の風の運び手として

 もう一つ,非日常・日常という局面でお話ししたいのは,私は日頃は病院に毎日詰めているのですが,たまに研修旅行などで4,5日病院をあけて帰ってくると,病院に入るのがたいへんつらいときがあります。それほど病院というところは非日常的なところです。朝日が射し込んでくるようなロビーやエントランスに青い顔をした人や,つらそうな人がどんどん朝から入ってきます。

 

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