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 さらに,究極的に考えると,私も含めてそういう方と付き合いたいという情熱がある人というのは,やはり自分の癒し,自分の救いを求めている人ではないでしょうか。だけど本当は自分が何の救いを求めているのかわからない。しかし,これが人間なのだと思います。

モーセの生涯にみるボランティアとしての究極

 私は牧師ですので,旧約聖書についても話させていただきます。
 モーセが神様に呼ばれるところがあるのです。まず,モーセという人はどんな人だったかというのをちょっとお話しします。彼の先祖たちは飢饉が起きたので,エジプトという豊かな穀倉地帯へ逃げて行ったわけです。そういう人たちがエジプトの地でだんだん繁栄してふえていった。それに対してエジプトの国王ファラオが危倶を覚えて,国際的な危機問題に発展した。もし隣国と戦争をしたら,この人たちは相手方につくかもしれない危険な存在だし,経済的にもこの人たちに国の富を吸い尽くされるのはいやだと。そういう状況の中で,ファラオはイスラエルの人々の絶滅計画という政策を打ち出しました。どういうことかというと,男は死ぬまで働かせよう。そして子供が生まれたら男の子は殺そう,つまり反逆の芽を摘もう。そういう中で親たちは密かに子供を生んで,葦で編んだ舟をつくって,ナイル川に流してやった。そうしたら,一艘の葦舟がナイル川の岸辺の葦の中に漂って,どこかに引っかかっていた。そこへこともあろうに迫害者であるエジプト王家の王女が水浴びに来て,その舟に乗った赤ん坊(モーセ)を見つけて,あまりにかわいいので拾って育てることにした。モーセはそういう数奇な運命をたどるのです。

 

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