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 このごろはヘルスケアという言葉がはやっていますが,これは病気をもった人の世話をするということはもちろんですが,それ以外に,生活上の世話をする(介護をする)ということも含まれます。このように私たちはケアとかキュア,あるいはヒーリングという言葉を使い分けなければならないのです。
 さて,ヒーリングということは,漢字で“癒し”と書くのがいちばん適切だと思うのですが,この“癒”という文字を構成する愈という文字は「中をくり抜いた丸木舟」という意味ですから,からだの中から病気がくり抜かれるように取り去られるという意味をもっているのです。

心の癒し手となる存在

 もう少し立ち入って,では私たちがこの癒しにタッチするということはどういうことかといいますと,まず最初の条件は,その人の心と私たちの心との間に共感があるかどうかということです。共鳴という言葉がありますね。U字型の音叉をたたくと,そばに置いた音叉から同じ波長が出て,片方を止めてももう一方が動き出す。同じ振動数をもっている楽器をそばに置くと,片方の出した音を感じとって,一緒にバイブレーションが起こり,それと同じ音が出る。これを共鳴と申します。それと同じように,共感というのは,「あの人は気の毒だ」というように同情するのとはちょっと違い,病気をもっている人や,死が近づいた人に対して,そのそばにいる人が,もっと深く相手の心の底までわかるということ,たとえて言えばその人の話を聞くと本当に自分の心が痛むということです。

 

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