そしてまた,一つの病院が独立した総合病院としては機能できないので,三つか四つの病院が合同して,A病院は心臓病を,B病院は外科的な治療を,C病院は臨床検査をというように,それぞれの病院で役割を分担しあうという病院の再編成が着々となされているということでした。このことは東京でいえば「聖路加・虎の門・日赤メディカルセンター」となるというようなことです。そしてそこから小児科は全部なくなっています。小児科では検査もあまりできないし,いろいろなことに手がかかるので経済的に引き合わないからだというのです。ですから小児の疾患のケアは開業医か小児病院に回してしまおうというわけです。
また,入院患者についてもベッドを回転させないと病院の経済が立ちゆかないから,5日か6日で退院させることになり,ゆっくり患者のベッドサイドにいてあげる日時的な余裕ももてなくなっています。ですからなおさら死を免れない患者さんに何かをしてあげることはできないので,ホスピスケアは別のどこかで提供していくことを考えなければならなくなってきました。
アメリカでは施設でホスピスケアをやるのは高くつくというので,在宅ホスピスケアの方向に向いているようです。そして在宅ホスピスケアではがんとエイズだけではなしに,あらゆる治らない末期の患者を自宅に訪問して世話をします。日本は緩和ケア病棟あるいはホスピスには,がんとエイズの患者しか収容できない規則になっていますが,アメリカやイギリス,オーストラリアなどでは病名を狭く限ることなく,末期であれば何でも同じであると考えて,そういった人には病院(施設)でできなければ在宅で面倒をみようという動きが起こっています。
医学は心を癒してきたか
さて,アンブロアーズ・パレが言った最初の言葉に戻りますが,3節めに「慰めを与えることはいつでもできる」とあります。
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