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制限される医療費

 

 このような動きは全米に見ることができます。アメリカには日本のような国による国民皆保険の制度がありません。国が面倒を見るのはメディケア(65歳以上や障害者を対象)とメディケイド(貧窮者を対象)という2つの保険だけです。一般の人々は各自がそれぞれ民間の保険に加入して病気に備えているわけです。

 保険会社は営利事業ですから,できるだけ支出を抑えて,採算性をよくし,さらに加入者を増やしたいと思う。保険会社が医療費の支払いをなるべく低く抑えてかかるのは当然でしょう。無駄な医療はなされていないか,よけいなことはしていないかとだんだん医療の中身にまで目を光らせて,医療費の支払いを渋ってきます。これを"管理医療" (managed care)といいます。

 同じように政府も1987年からはふえつづける医療費に音を上げてメディケイド,メディケアの保険の支払いを制限しはじめました。これは"疾患別定額払い方式=DRG"(Diagnosis RelatedGroups)といわれるもので,疾病別に前もって医療費の支払いを決めてしまっているのです。

 病院側はこれらの支払い者側に対抗して,かかった医療費は保険会社のいうがままではなく,要した費用は要しただけ回収していかなければなりません。この力関係をできるだけ有利に運ぶために,医療を提供する側も団結して支払い側と交渉に当たることにしたわけです。

 つまり,アメリカでは,医療機関も激しい競争社会を生き抜いていかなければならなくなったのです。

 

 

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