■事業の内容
プレジャーボート以外の海難が減少傾向にあるのに反して、プレジャーボートの海難は年々増加の傾向にある。平成7年に発生した全要救助船舶の中にプレジャーボートが占める割合は35%に達しており、憂慮すべき事態となっている。 これらプレジャーボートの乗組員は、いわゆる海のプロでない者が多く、その海難の原因の多くが基本的な知識及び技術の欠如によるものであることから、特に海難防止の強力な指導が望まれる。 このため、これらの海難を未然に防止し、被害を最小限にくい止めるために、安全講習会及び実技講習会の開催による教育活動、現場指導・安全パトロールによる安全活動及び小型船舶の安全運航に関する広報誌、パンフレット、ポスター等を発行しての広報活動並びに主として小学生を対象とした海事思想の普及活動を行うことによりプレジャーボートの海難の防止に寄与することを目的として、次の事業を実施した。 [1] 教育活動 [1] 海上安全講習会 モーターボート、ヨット、ウインドサーフィン、水上オートバイ、遊漁船等小型船舶の所有者、運航者に対して海難事故の実態、防止対策、海の交通ルール、気象・海象等について安全講習会を実施した。 開催地区……尾鷲、伊勢、田原、四日市、津、三河、美浜〔7地区 7ケ所〕 参加人員……283名 [2] 水上オートバイの実技講習 水上オートバイの所有者、運航者に対し海の交通ルール、気象・海象等について座学講習及び初心者に対する実技講習を実施した。 本年度は開催日(平成9年7月26日)に低気圧の接近で天候悪く座学のみとし、実技は、平成9年8月9日にしたが海上模様が不安定なこともあって受講者が少なかった。 開催地区……新舞子〔1地区 1ケ所〕 参加人員……35名(内実技18名) [2] 安全活動 [1] 海上安全指導員連絡調整会議及び研修 平成8年度における現場指導活動についての実施要領、実施日程、実施場所海域等についてを検討調整を行うとともに海上安全指導員に対し研修を実施した。 開催地区……名古屋、四日市、鳥羽、尾鷲、衣浦、蒲郡〔6カ所〕 参加人員……79名 [2] 海上安全指導員による現場指導 土・日曜日、祝日等海洋レジャー、マリンスポーツの活発となる日を重点にプレジャーボート、瀬渡船等小型船舶の基地、係留所等の現場において航海計画、法定備品、書類の整備携帯及び船体機器の点検整備並びに団体行動、連絡方法、出入港届の提出(家族等への伝達)等について指導を行った。 指導回数……348回
[3] 広報活動 [1] 広報誌の発行 モーターボート、ヨット、遊魚船、瀬渡船等小型船舶の安全、事故防止等について啓蒙を図るため有識者等の意見及び最新の情報をもとに作成配布。 a.題 名……「マリーン・エンゼル」 b.規 格……B5版 オフセット印刷 c.部 数……600部×2回 d.配布先 ……会員、関係官庁等 [2] ポスターの作成 平成9年度の全国海難防止強調運動用応募ポスター小中学生の部において、日本財団会長賞受賞図案及び第四管区海上保安本部長賞受賞キャッチコピー「広い海 小さな異常に早い処置」を掲載し、海難防止を呼びかけたポスターを作成配布した。 部 数 600部 配布先 会員、関係官庁等 [3] パンフレットの作成 a.題 名……「海洋レジャーを楽しく安全に」 b.規 格……B5版 オフセット印刷 c.内 容……[1]観天望気(前回の続編)、[2]小型船舶・ヨット等の「運航の手引き」 d.部 数……600部×2回 e.配布先……会員、関係官庁等 [4] 海洋安全教室 海におけるレジャーの安全とマナーの向上をめざし、夏休み中の小学生及びその保護者を対象に海と親しむ親子海洋安全教室を開催した。 開催地区……蒲郡市西浦地区〔1地区 1ケ所〕 参加人員……186名(保護者85名、子供101名)
■事業の成果
当管内の、伊勢湾、三河湾並びに志摩半島周辺、熊野灘海域は、海洋レジャー等のメッカと広く知れ渡っておることから、海洋性レジャーシーズンともなれば、例年多くのレジャー客が訪れるが、今シーズンは初期のころ、異常気象(近年になく6月に2個の台風が本土上陸、しかも週末であった)で、例年ほどの盛況さはないものの後半にいたり天候も安定したこともあり、全体的には管内外を問わずかなりのレジャー客が訪れている。 これに伴い、プレジャー関係の海難事故も依然として、高い比率で発生している。平成9年1月〜12月に管内で発生した全海難件数は59隻、このうちプレジャー関係は26隻で全体の44%強を占めている。(昨年は全事故72隻中、プレジャー関係は29隻で40.28%) しかしながら、過去5年間の統計をみると全海難事故のうち、プレジャー関係の事故は常に高い比率を示しているものの、件数としては着実に減少している。 このことは教育活動の「海上安全講習会」、安全活動の「現場指導」、広報活動の「ポスター」、「パンフレット」、「広報誌」等の配布による啓蒙活動、更に小中学生を主とした海洋教室の開催等々の活動を積極的に実施してきたことによる大きな成果の現れと思われる。 このような現状に鑑み、当協会としては、管内に在籍する1万数千隻のプレジャー関係の小型船舶の運航者はもとより、小中学生に至るまでの幅広い人々に海難事故防止の指導啓蒙を継続的に根気よく、かつ強力に推進することが極めて重要であると痛感している。
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