■事業の内容
海上災害防止センターが排出油防除等の作業を実施するに際し、迅速且つ適切な処理を実行するために、当センターと作業の実施に関する契約を締結している契約防災措置実施者(全国83地区142社。うち、5地区5社は、有害液体物質等防除機材の保管についても契約。)及び傘下の関係者等並びに流出油災害対策協議会会員に排出油防除に必要な知識及び技術を習得させるとともに、排出油の防除諸作業の実施方法を演練し、防災能力の向上を図ることを目的として次の事業を実施した。 [1] 海上防災訓練の事前打合せ 次の各地において、関係海上保安本部・保安部署、契約防災措置実施者、海上災害防止センター及び関係防災事業者等による訓練実施日時・場所、訓練内容の検討、訓練要領の作成及び訓練海域調査等を実施した。 室蘭地区、浜田地区、神戸地区、水島地区、鹿児島地区、銚子地区 [2] 海上防災訓練 [1] 室蘭地区海上防災訓練 a.研修会 a 日 時 9月4日(木) b 場 所 ホテル セピアス c 内 容 イ.「室蘭地区における油回収能力を中心とした防除体制」 室蘭海上保安警備救難課長 ロ.「ナホトカ号事故における油防除作業の概要と教訓」 ハ.「油防除資機材の使用方法及び使用限界」 オイルスピル・コンサルタント d 参加人員 約90名 b.防災連絡会議 a 日 時 9月4日 b 場 所 ホテル セピアス c 内 容 室蘭地区において大量の油流出事故が発生した場合を想定して、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の家訓、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議した。 d 参加人員 約20名 c.海上訓練 a 日 時 9月5日(金) b 場 所 室蘭港本輪西岸壁及び前面海域 c 目 的 室蘭港及びその周辺海域において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、官民一体となった油回収作業を中心とする防除作業の演練を通じて、関係機関相互の効果的な連携を図るとともに、室蘭地区における防災能力の向上を図る。 d 訓練項目 ・油回収装置の取扱方法(準備から使用、掃除、撤収まで)の演練 ・回収油一時貯蔵装置の取扱方法(準備から使用、掃除、撤収まで)の演練 ・油回収の補助手段としてのオイルフェンスの展張と回収作業の総合訓練 e 参加勢力 船艇1隻、重機3台、人員50名、オイルフェンス400m、油回収装置2基、回収油一時貯蔵装置2基 [2] 浜田地区海上防災訓練 船艇1隻、重機3台、人員50名、オイルフェンス400m、油回収装置2基回収油一時貯蔵装置2基 a.研修会 a 日 時 9月10日(水) b 場 所 浜田ステーションホテル c 内 容 イ.「石見地区における油回収能力を中心とした防除体制」 浜田海上保安部警備救難課長 ロ.「ナホトカ号事故における油防除作業の概要と教訓」 オイルスピル・コンサルタント ハ.「油防除資機材の使用方法及び使用限界」 (株)ダイトー・コーポレーション防災部主幹 d 参加人員 約60名 b.防災連絡会議 a 日 時 9月10日(水) b 場 所 浜田ステーションホテル c 内 容 石見地区において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議した。 d 参加人員 約15名 c.海上訓練 a 日 時 9月11日(木) b 場 所 浜田港公共埠頭岸壁及び前面海域 c 目 的 浜田港及びその周辺海域において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、官民一体となった油回収作業を中心とする防除作業の演練を通じて、関係機関相互の効果的な連携を図るとともに、浜田地区における防災能力の向上を図る。 d 訓練項目 ・油回収装置の取扱方法(準備から使用、掃除、撤収まで)の演練 ・油吸着材及び吸着材フェンスの取扱方法の演練 ・油回収の補助手段としての吸着材フェンス等の展張と回収作業の総合訓練 e 参加勢力 船艇3隻、重機1台、人員60名、油回収装置1式、オイルフェンス200m吸着材フェンス100m [3] 神戸地区海上防災訓練 a.研修会 a 日 時 10月6日(月) b 場 所 神戸タワーサイドホテル c 内 容 イ.「大阪湾における防除体制の現状」 神戸海上保安部警備救難課長 ロ.「有害物質と油事故の違い」 キソー化学工業(株) 代表取扱社長 ハ.「ダイヤマンド・グレース号事故の教訓等について」 海上災害防止センター防災部長代理 d 参加人員 約100名 b.防災連絡会議 a 日 時 10月6日(月) b 場 所 神戸タワーサイドホテル c 内 容 神戸地区において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議した。 d 参加人員 約20名 c.海上訓練 a 日 時 10月7日(火) b 場 所 尼崎西宮芦屋港内関西電力(株)第三発電所前面海域 c 目 的 尼崎地区石油コンビナート等特別防災地区協議会が実施する兵庫県石油コンビナート等防災訓練と連携し、兵庫県南東部を震源とする地震により津波注意報が発令、尼崎西宮芦屋港内の関西電力(株)第三発電所の桟橋に係留中の原油タンカーが緊急離岸中、操船を誤り乗揚げ、船底に破口を生じ積み荷の原油が流出、その後火災が発生したとの想定により、海上災害防止センター及び関係機関の連携のもと、災害拡大防止のための応急措置を演練することにより、官民一体の防災体制の充実と防災意識の高揚を推進し、もって海上における災害応急体制の充実強化を図ることを目的とする。 d 訓練項目 ・情報伝達及び被害状況調査 ・人員、資機材、船艇の動員及び輸送 ・総合調整本部の設置、運営及び通信体制の確立 ・ガス濃度測定及び付近航行船舶に対する安全措置 ・人命救助 ・流出原油防除(オイルフェンス展張による拡散防止) ・流出原油防除(油回収装置、高粘度油回収ネットによる回収、油吸着材及び油処理剤による処理) ・船舶火災の消火及び臨海部の火災消火 e 参加勢力 船艇36隻、航空機1機、人員約240名、オイルフェンス400m [4] 水島地区海上防災訓練 a.研修会 a 日 時 10月29日(水) b 場 所 サンピア倉敷 c 内 容 イ.「水島港の防除資機材の配備状況等について」 水島海上保安部警備救難課長 ロ.「油処理剤の使用等について」 タイホー工業(株)技術課長 ハ.「ナホトカ号事故の教訓から」 海上災害防止センター理事長 d 参加人員 約130名 b.防災連絡会議 a 日 時 10月29日(水) b 場 所 サンピア倉敷 c 内 容 水島地区において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議した。 d 参加人員 約20名 c.海上訓練 a 日 時 10月30日(木) b 場 所 水島航路東側水域 c 目 的 水島入港中の大型タンカーが航路付近で座礁し、大量の油流出事故が発生した場合を想定し、流出油に伴う被害の局限を図るため、官民が一体となり現実に即した防除活動を演訓するとともに、本演練において生ずる問題点を抽出し、その対応を検討することにより、統一的かつ効果的な防除体制の構築を図ることを目的とする。 d 訓練項目 ・情報伝達 ・人員、資機材の動員 ・対策本部の設置 ・流出原油防除(オイルフェンス展張による拡散防止) ・流出原油防除(油回収装置、高粘度油回収ネットによる回収、油吸着材及び油処理剤による処理) e 参加勢力 船艇44隻、航空機2機、人員約250名 [5] 鹿児島地区海上防災訓練 a.研修会 a 日 時 11月19日 b 場 所 メモリープラザ大安閣 c 内 容 イ.「鹿児島地区における海上防災体制について」 鹿児島海上保安部警備救難課長 ロ.「今日の油処理剤について」 タイホー工業(株)技術課長 ハ.「ダイヤモンド・グレース号事故の教訓等について」 海上災害防止センター防災部長代理 e 参加人員 約70名 b.防災連絡会議 a 日 時 11月19日(水) b 場 所 メモリープラザ大安閣 c 内 容 鹿児島地区において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議した。 d 参加人員 約25名 c.海上訓練 a 日 時 11月20日(木) b 場 所 鹿児島港谷山二区第三突堤及び前面海域 c 目 的 鹿児島港及びその周辺海域にといて大量の油流出事故が発生した場合を想定し、官民一体となった油回収作業を中心とする防除作業の演練を通じて、関係機関相互の効果的な連携を図るとともに、鹿児島地区における防災能力の向上を図る。 d 訓練項目 ・油回収装置の取扱方法(準備から使用、掃除、撤収まで)の演練 ・油回収の補助手段としてのオイルフェンスの展張と回収作業の総合訓練 e 参加勢力 船艇13隻、人員約120名、オイルフェンス400m [6] 銚子地区海上防災訓練 a.研修会 a 日 時 11月27日(木) b 場 所 銚子プラザホテル c 内 容 イ.「銚子地区における排出油防除体制について」 銚子海上保安部警備救難課長 ロ.「小人数による効果的油防除について」 (株)ダイトー・コーポレーション防災部主幹 ハ.「ダイヤモンド・グレース号事故の教訓等について」 海上災害防止センター防災部長代理 d 参加人員 約90名 b.防災連絡会議 a 日 時 11月27日(木) b 場 所 銚子プラザホテル c 内 容 銚子地区において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議した。 d 参加人員 約25名 c.海上訓練 a 日 時 11月28日(金) b 場 所 銚子漁港公共埠頭及び前面海域 c 目 的 銚子港及びその周辺海域において大量の油流出事故が発生した場合を想定し、官民一体となった油回収作業を中心とする防除作業の演練を通じて、関係機関相互の効果的な連携を図るとともに、銚子地区における防災能力の向上を図る。 d 訓練項目 ・油回収装置の取扱方法(準備から使用、掃除、撤収まで)の演練 ・油回収の補助手段としてのオイルフェンスの展張と回収作業の総合訓練 e 参加勢力 船艇4隻、人員約120名、油回収装置一式、オイルフェンス200m、吸着材フェンス100m [3] 巡回研修会 [1] 留萌地区巡回研修会 a.日 時 7月10日(木) b.場 所 光風館 c.内 容 a 研 修 イ.「留萌地区における防災体制について」 留萌海上保安部警備救難課長 ロ.「ナホトカ号事故における油防除作業の概要と教訓」 ハ.「オイルフェンス、油回収資機材、油処理剤、油吸着剤の使用方法」 海上災害防止センター防災部業務課係長 b 討 議 留萌地区において大量の油流出事故が発生した場合における防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等について討議した。 d.参加人員 約30名 [2] 佐伯地区巡回研修会 a.日 時 12月5日(金) b.場 所 佐伯港湾事務所 c.内 容 a 研 修 イ.「佐伯地区における防災体制について」 佐伯海上保安署主任 ロ.「ナホトカ号事故における油防除作業の概要と教訓」 ハ.「オイルフェンス、油回収資機材、油処理剤、油吸着材の使用方法」 海上災害防止センター防災部業務課係長 b 討 議 佐伯地区において大量の油流出事故が発生した場合における防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等について討議した。 d.参加人員 約15名 [3] 酒田地区巡回研修会 a.日 時 1月27日(火) b.場 所 グリーンホテル c.内 容 a 研 修 イ.「酒田地区における防災体制について」 酒田海上保安部警備救難課長 ロ.「ナホトカ号事故における油防除作業の概要と教訓」 ハ.「オイルフェンス、油回収資機材、油処理剤、油吸着材の使用方法」 海上災害防止センター防災部長代理 b 討 議 酒田地区において大量の油流出事故が発生した場合における防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等について討議した。 d.参加人員 約30名
■事業の成果
[1] 海上防災訓練 昨年度に引き続き、研修会においては部外講師の招請、海上訓練においては対象を排出油防除協議会まで拡大し、またブロック制による契約防災措置実施者の訓練参加機会の拡大等、訓練実施方式を改善することにより充実強化を図ったほか、本年度は、特にナホトカ号事故、ダイヤモンド・グレース号事故の教訓等を踏まえ、油回収を中心とした実戦的な訓練を行うことにより充実強化を図り、これらの実施結果を考察すると、次の点が新方式による成果として上げられる。 [1] 部外講師の講演 従来は、海上防災体制、流出油防除に関する技術面の基礎的知識を中心に研修を行っていたが、ナホトカ号事故の教訓等を踏まえ実務的な内容にするとともに、海上訓練において応用できるよう研修内容の充実を図った。 [2] 契約防災措置実施者の地域的連携 室蘭地区においては函館地区及び苫小牧地区、銚子地区においては鹿島地区、神戸地区においては姫路地区、水島地区においては宇野地区、高松地区及び坂出地区、浜田地区においては境地区、鹿児島地区においては喜入地区、八代地区及び川内地区からの契約防災措置実施者の参加を得て、研修会、防災連絡会議及び海上訓練を通じ、海上防災に関する認識を新たにするとともに、日頃交流の少ない契約防災措置実施者間においても地域的な広がりの中で相互の連携が図られた。 [3] 防災連絡会議の充実 当該地区において大規模油流出事故が発生した場合を想定し、訓練参加契約防災措置実施者、センター派遣職員及び海上保安部署担当官その他関係組織担当者が、防除体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続等に関し協議し、発災等における行動認識の統一化が図られた。 [4] 海上訓練内容の充実 油回収を主体とした油回収装置の取扱訓練から多数の関係機関が参画した総合訓練、地域特性を加味した訓練を実施し、契約防災措置実施者、排出油防除協議会、関係機関の海上防災能力の向上が図られた。 [2] 巡回研修会 排出油等の事故経験の少ない地区及びブロック内で実施する訓練に遠隔地のため参加困難な契約防災措置実施者を対象に巡回研修を行った。 各地区とも実際の事故発生に当たり、的確な防除活動を実施するためには、地域の特殊性(地形、気象、海象等)を考慮した対応が必要であり、特に発災時における防災組織体制の早期確立(対策本部の設置等)、連絡系統の確保、日常における防災資機材の充実及び取扱訓練の必要性等、定期的な訓練の実施等についての積極的な討議が行われるとともに、油防除に関する専門的知識の必要性等が認識され、地域防災に対する防災意識の高揚が図られた。 以上、民間防災組織の中核的存在である当センターが主体となり、発災時に必要とされる官民一体となった総合的防災体制に即した排出油等防除に関する訓練を実施し、関係各機関との協力体制がより一層強化され、地域防災の発展に貢献することができた。
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