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■事業の内容

地震津波による災害・海難の発生を未然に防止するためには、過去の経験的知識と最新の科学的知見に基づく情報・判断により冷静・迅速・的確な対応が必要である。従来は、地震津波に関する情報を予め提供できなかった。
 本事業では、過去の地震津波に関する資料収集を行うとともにシミュレーションプログラムを開発し、モデル港湾を設定しシミュレーションを実施することにより、地震津波に関する情報を予め提供することが可能となるため、人類の生命・財産に対する安全、船舶航行の安全及び学問上の進歩発展に寄与し、もって災害・海難の防止に資することを目的として以下の事業を実施した。
 [1] シミュレーションプログラムの改良
   基礎プログラム改良のため、東北地方の太平洋岸に関する既存の研究事例及び数値実験手法の調査と分類・整理及び検討を行い、前年度開発の基礎プログラム、伝播プログラムを改良した。
 [2] モデル港湾及び震源モデルの設定
   宮古、釜石、大船渡の各港をモデル港湾として、各港湾資料、既往地震の震源モデル及び海底地形資料の収集・整理・分類及び現地踏査並びに調査を行った。
 [3] シミュレーションの実施及び再現性の検討
   計算対象海域及びメッシュサイズの決定、海底地形データを作成の上、シミュレーションを実施し、シミュレーション結果について検討した結果ほぼ妥当な再現性が得られることを確認した。
   メッシュサイズとしては計算対象海域内で沖合から岸に向かい4,050m〜50m間5段階の多重メッシュを採用し、各メッシュ内の予測値を順次計算した。
 [4] プログラム改良、再計算
   シミュレーション結果に基づいてプログラムに必要な修正・改良を施し、再計算を実施した。
■事業の成果

平成8年度の東北地方日本海側に引き続き、今年度は同地方太平洋側ついて津波襲来時の各港湾における海水の挙動について研究を進め次のような成果を得た。
 今年度は、2つの断層モデルを仮定しての数値計算により各港湾での津波到達時間、津波高分布、津波波高時系列等の計算値と既存資料の実測値とを比較して検証を行った結果、各港湾で多少の差はあるが、再現性はほぼ良好であるとの評価を得た。計算値と実測値との差については、計算に採用した格子サイズの適否、実測値そのものの特性もあるとの指摘もあり、今後さらに究明すべき課題であると考えられる。
 しかしながら今年度、昨年度で合わせて6港湾について、それぞれ幾つかの想定地震による津波襲来に際しての予測計算が実行できることになり、各港湾における船舶の避難、海岸付近の防災、その他の対策立案に貢献できるものと大いに期待される。





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