本年度はINSROP第1期の事業成果に対する国際評価委員会の提言、勧告に基づき、第2期の事業を行った。第2期では、北極海航路における具体的な商業運航実施に伴う様々な観点から整理し、具体的な北極海航路航行シミュレーションを行うことにより、その実際的な解決策を策定、提言し、併せて、北極海の自然環境の理解をより深めるための資料情報を活用容易な形式に整え、開示するための作業を行った。 本事業の中で、INSROP事業は、当財団及びノルウェーのフリチョフ・ナンセン研究所(FNI)、ロシアの中央海洋調査・設計研究所(CNIIMF)の3者間で共同して行うものであり、各国の制度、習慣、言語の違い、遠隔地間での共同研究によるタイミングのずれなど困難な点が多いが、航行シミュレーション、サブプログラムの統合、サブプログラム毎の調査研究のいずれも、各担当者、コーディネーター、INSROP事務局等の努力により、第2期初年度の目標を達成した。 また、INSROP事業の最終成果として、北極海航路及び関係地域における自然環境、生態系情報等を統括した可視化情報をINSROP GIS (Geographical Information System)として整備するために、ノルウェーのSINTEF(The Foundation for Scientific and Industrial Research at the Norwegian Institute of Technology) が中心となって各種データの整理を行い、システムの構築を進めた。 一方では、北極海航路において最大載荷重量5万DWTを有する砕氷型バルクキャリアーの船型開発を行った。これは喫水を最大12.5mまで取れる北側のルートに対応できる船型として開発したもので、今後の具体的なニーズに対応する場合のベース船型となりうるものである。開発に際しては、北極海航路のほぼ半分の距離が氷の影響のない開水域であることから、開水域の推進性能にも考慮した。 今回水槽実験を通して得られた砕氷型商船の開水中性能についてのデータは、我が国ではほとんど例がないため、今後のために非常に有用なものとなった。 さらに、開発した船型については、模型試験結果及び各種分析により日本−欧州間での経済性について、従来のスエズ運河経由の場合とほぼ同等という評価を得た。 外国船籍の商船が北極海航路を傭船航行することを想定して、傭船可能な耐氷型商船、試験時期、経路及び行程、傭船費用、砕氷船のエスコート費用、保険費用等、現時点で調査が可能な項目について、カナダ及びロシアにおいて調査を行い、傭船の可能性についての具体的な資料を得た。 これらにより、我が国造船業・海運業の振興及び造船技術の発展、並びに国際協調に貢献することができた。