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■事業の内容

本研究は、船体振動を初期段階で予測するために、数値解析技術、新簡易解析法の研究を行うとともに、マルチメディア・データベースを構築し、振動に関する実用的な設計指針及び設計評価法を得ることを目的に、3ヶ年計画の第1年度の研究として、下記の事項について実施した。
 [1] 過去の振動問題及び研究の調査・整理
  a.文献調査
    過去に行われた振動に関する文献調査・選定を行い、内容を項目ごとに分類して、データベース作成可能のように分類表示し、振動評価法や振動解析実例等の概要が分かる抄録を作成した。
  b.振動計測結果に関する調査研究
    アンケートにより過去の実船計測データ保有状況を調査した。それらの調査を基にデータベース化に有効利用できるよう調査フォーマットを作成してアンケート調査を行い、節振動、上部構造、主機、局部振動に関しパラメータスタディを行った。
  c.振動評価に関する調査研究
    現在の振動設計や防振設計の方法を把握するため、居住区振動評価基準、構造部材の振動許容及び機器・艤装品の使用基準等の現状について、設計計画時と海上公試時に関する使用基準や共振回避領域等必要項目別に調査し、現在設計に使用されている振動評価基準の現状を掴んだ。
 [2] 設計初期段階における振動予測
  a.数値解析技術の研究
    数値解析技術の現状を、簡易式、簡易FEM、詳細FEMの3つのレベルに分けて調査し、それらの資料を基に主船体節振動と上部構造振動に関しての新しい固有振動簡易推定法に関連する種々の式を整理して、その精度を検討した。
  b.詳細解析検討事例の調査
    主船体節振動及び上部構造の詳細解析検討事例の調査を行った。また、文献から付加質量や減衰係数なども調べたが、構造要素モデル化する際の要素の剛性、質量の取り方について整理された基準はなく、推定精度は個々の技術者の経験に依存していることが分かった。
 [3] 統一計測法による振動データの収集
  a.振動計測に関する調査検討
    振動予測技術の基本評価の基になる最新の振動データ構築のために、統一された計測法によりデータを収集して分析する必要があるため、造船各社の振動計測・実験機器の所有状況についてアンケート調査を行い、居住区、節振動、局部振動などの統一的計測要領案を作成した。
  b.振動計測データ分析に関する調査検討
    振動計測データ分析は、その分析及び表示方法が統一されていることが望ましいことから、居住区、節振動、局部振動などの計測データ分析法に関する現状と問題点等について資料調査を行い、それらの資料から統一的振動分析及び節振動共振時の振動モードを検討して、統一的な表示方法を作成した。
 [4] 設計データベースの構築
  a.設計データベースに関する調査検討
    防振設計支援データベースがどのような機能を備えるべきかどうか検討するため、節振動、上部構造の前後振動、ロカール振動の防振設計のフローチャートのアンケート調査を実施し、標準的な防振設計フローを作成した。
    また、マルチメディアを考慮に入れたデータベースの利用形態や設計支援ツールとしてのシステム構成及び利用形態、ユーザーインターフェース等の検討を行い、データベース構築及び支援ツール作成のための基礎資料が得られた。
■事業の成果

3ヶ年計画の第1年度の研究として実施した結果、下記の成果を得た。

 収集リストアップした船舶の振動に関する文献数は1,358件にものぼり、それらの文献は出典ごとに必要項目が選択できる検索帳票書式となっており、文献抽出が容易にできるようになった。その内、利用度が高いと思慮される文献は更にその内容の要点を記入した抄録を作成した。

 今後の研究のためのベースとなる各社の実船振動計測データやトラブルデータもMS−Excel フォーマットで収集可能となり、設計支援ツールに組み入れるに有効なデータの収集が容易となった。また、精度よく、データの利用価値を増強するため、実船試験によりデータが得られやすい統一計測法 及び統一的な解析法を提案することができた。

 上記データを基に構築する実用的な振動設計支援ツールのシステム案が提言でき、今後の研究取り組みの基礎思料が得られた。

 本年度は主に、設計データベース構築の基礎となる文献や種々のデータ収集を行い分類整理したが、それらのデータより新簡易解析法や設計支援ツールの構築に対する方向付けができ、次年度研究に向けての有益な基礎資料が得られた。






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