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■事業の内容

本研究は、波浪中の推進性能や構造応答を長期にわたってモニターする基礎技術を得るとともに、それらのデータを定量的にモニタリングする手法について、実船によりフィールドテストを行い、船舶運航の経済性と安全性の向上を図ることを目的に、3ヵ年計画の第2年度の研究として、下記の事項について実施した。
 [1] モニタリングのコンセプチュアルデザイン
  a.文献等による調査
   (平成8年度で終了)
  b.コンセプチュアルデザインの提案
    モニター情報の船陸共有の必要性を検討し、船陸間でのデータ通信について衛星通信の現状及び将来動向の調査モニタリングの中での利用法の検討を行い、フィールドテスト船での船陸データ通信試行準備(地上局側のデータ受け入れ)を行った。
    また、構造モニターを主に運航安全面からのモニター指標や統計モデルの検討を行い、モニタリングの基本的フレームワークを示した。
 [2] 実環境下モニタリング手法の探索的/実験的研究
  a.波浪情報の仕様とその特定法
    東京商船大学所有の観測船「汐路丸」において波浪性能の実船計測を行い、追い波条件下の検証及び改良に重点を置き、波浪特定のために用いる船体の運動モードの組み合わせや周波数ベースで切り替えを行う手法による精度向上の検討を行った。
    また、波浪推算法やレーダー画像による波浪特定法の検討を行い、波浪予測法の改良を試みた。
  b.性能データ自動計測・収録法
    下記d項に含めデータの自動計測及び収録法について検討した。
  c.構造応答のセンシング及び計測法
    先端的センサーとして、光ファイバと犠牲試験片を採り上げ、その特性と船体構造への適用法を検討した。光ファイバについては、汐路丸にレーザードップラ式(衝撃感知用)とプラグ格子式(歪感知用)を取り付けて実験を行い、実船に適用する場合の具体的問題を掴んだ。
    犠牲試験片については、変動応力下での特性を実験的/解析的に検討し、実船の構造部材の疲労寿命予知を行う手順を検討した。
  d.モニタリングプロトタイプの試作及び試行計画
    波浪/性能/構造モニターのセンシング仕様の検討・準備、犠牲試験片等の新センサー試作、船上データ処理システムや陸上解析システムの試作を行い、モニタリングプロトタイプとした。
 [3] 提案方式の計測試行及び中期計測データの取得
  a.実船での実環境フィールドテストの実施
    コンテナ船とばら積貨物船を選定し、コンテナ船については定検ドック時(於:マレーシア)、ばら積貨物船については日本寄港時に数回にわたり、モニタリングプロトタイプの搭載を行った。機器システムの調整を行い、本年度後半からモニターの試行(フィールドテスト)を開始した。コンテナ船は波浪/性能/構造モニターを、ばら積貨物船は波浪(目視ベース)/性能(船体運動を含む)モニターを主に行っている。
 [4] 解析法の研究と計測結果による解析法の検証
  a.実海域性能解析法の研究
    実海域における船速変化等の性能データの統計処理法(船上一次解析)及び、それらから汚損・経年影響、風、波浪、海流影響、操縦影響の要因分析を行い、標準状態に換算する手法(陸上二次解析)を検討整備した。
    更に、二次解析法に関する理論的考察(実海域中の船速低下要因の要因毎の確率密度関数の推定法)も行った。
  b.実海域構造応答解析法の研究
    構造モニターには、航海支援(安全運航)と保守支援(船体構造の健全性維持)という2つの目的があるが、各々でセンシングする項目やモニター法も異なる。タンカー、ばら積貨物船、コンテナ船の船種別にセンシングの対象個所、検地物理量、解析法につき机上検討を行った。
■事業の成果

3ヵ年計画の第2年度の研究として実施した結果、下記の成果を得た。

 [1] 本事業の成果

  a.コンテナ船とばら積み貨物船を選定し、コンテナ船については波浪/性能/構造モニターを、ばら積貨物船は波浪(目視ベース)/性能(船体運動を含む)モニターを主に、試作モニタリングプロトタイプの搭載を行い、本年度後半からモニターの試行(フィールドテスト)に着手し、有益なデータが自動的に収集蓄積できるようになった。

  b.東京商船大学の観測船「汐路丸」での実船計測により、船舶の波浪計化及び先端的構造センサーとしての光ファイバの適用化に関する研究を行い、船舶の波浪計化及び光ファイバについて、適用上の具体的問題を掴むことができた。

  c.船上で得られたデータから、船上もしくは陸上で如何にモニターするかについて、性能モニターでは波浪や汚損等の船速への影響因子を解析する手法を構築し、構造モニターでは船種別にモニターの目的(航海支援と保守支援)に応じ、その方法の骨格を提案することができた。

  d.波浪/性能/構造の研究の進捗も見ながらモニタリングのコンセプチュアルデザインを検討しているが、本年度は、構造モニターを主に運航面からその基本的フレームワークを提案した。また、船陸間の高速データ通信も高度モニタリングの重要構成要素と考え、フィールドテスト船で試行できるよう準備(地上局側のデータ受け入れ)し、一部ではあるがその通信が可能となった。





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