■事業の内容
(財)日本海洋レジャー安全・進行協会が平成8年度に確立した海洋レジャー愛好家のための「新津波警報伝達システム」について、津波の襲来や地震の多い地区から2地区(岩手県宮古市と静岡県沼津市)を選定し、この2地区で国や地方自治体の防災関係者、海洋レジャー等関係者、報道関係者等を対象に説明会と公開実験を行った。 これらの人達に対しこの津波警報伝達システムが、従来の警報(サイレン、鐘、広報車等)の空白域である海岸や沖合にいる海洋レジャー愛好者や漁業者、作業者等に役立つシステムであることの周知に努めるとともに、実験によってその効果性を検証し、でき得れば公の津波警報伝達システム(注意を喚起するアテンションコール)として広く普及させ、津波による我が国の人的・物的被害の縮減を図っていくことを目的として実施した。 [1] 打上げ装置の改良 警報信号は一つの失敗も許されない高い信頼性が要求されるため、委員会で検討し、発射筒を丸型から角型に変更、信号弾の脱出速度を大きくする等の改良を行った。 [2] 説明会及び公開実験 a.宮古市 a 開催日時 : 平成9年10月15日(水)、10時30分〜13時00分 天候晴 b 説明会 : 消防本部大会議室 c 公開実験 : 宮古市藤原三丁目地先(藤原防波堤先端)で打上げ d 見学者 : 自治体の防災関係者、海洋レジャー・漁業関係者、報道関係者等 約100名 b.沼津市 a 開催日時 : 平成9年11月26日(水)、13時00分〜15時40分 天候雨 b 説明会 : 西浦地区センター c 公開実験 : 沼津市西浦大瀬(大瀬崎先端)で打上げ d 見学者 : 宮古市と同様の関係者約60名(雨天のため見学者が減ったと思われる) [3] 実験データの収集・整理 a.計測項目等 : 風向・風速、音圧レベル(打上げ場所から0.5、2、3、4、5kmの5個所を基本に計測)、発音間隔、飛翔状況、落下状況等を計測・観測した。 b.データの整理 : 地区別に距離と音圧レベルの関係、発音間隔の状況等について整理・分析を行った。 [4] 実験効果の調査 実験効果(特に音の大きさ)を調査するために、参加者は打上げ場所から0.5、2、3km離れた3個所に移動して音の大きさを聞いてもり次の調査を行った。 a.アンケート調査: a 参加者の中から分野別に任意に約70名を目途に抽出した。 b 調査内容は信号音の大きさと評価、防災上の有効性、要望・感想等。 c 調査結果は地区別に整理・分析した。 b.聞き取り調査:参加者の中から自治体等の防災担当者から、この津波警報伝達システム全体について意見を聴取、アンケート調査分析の参考とした。 [5] 総合評価 上記[3][4]を基に距離別に見た信号音の大きさ、天候による信号音の違い、警報としての有効性等について検討し、今後実用化のために改良・改善すべき事項、普及に関する課題等を抽出した。 [6] 報告書の作成 a.題名:新津波警報伝達システムの普及事業実施報告書 b.規格:A4判、54頁 c.数量:300部
■事業の成果
本事業は(財)日本海洋レジャー安全・進行協会が平成8年度に確立した「新津波警報伝達システム」を基に、信号弾が確実に飛翔し、発音するように従来の打上装置に若干の改良を加え、本システムの普及を図るため宮古市と沼津市で説明会と公開実験を実施したものである。
警報信号として採用されるためには、信号弾が一つの失敗もなく確実に発射され、飛翔し、所定の高度で炸裂し発音しなければならないが、今回の改良で全ての信号弾が失敗することなく打上げられた。また、10m/s程度の風速、15mm/h程度の雨の中では十分打上げ可能なことが明らかになった。
信号音ついても5km地点で80dB以上の計画値は達成したが、警報信号としては、3km地点を過ぎると音が小さく、音だけでなく視覚に訴える工夫が必要との指摘もあった。
アンケートによれば、確実に津波警報を伝達する方法がない現状では、本システムの考え方としては「有効である」との意見が70%を占めた。
これらの結果から、従来の津波警報の空白域にいる人達への何らかの伝達方法が期待されており、打上装置に着色発煙等可視信号を併用するなどの改良を加えれば、アテンションコールとしての有効な手段であることが明らかとなり、所期の目的は達成されたと考える。今後は、本事業で得た意見や指摘事項を基に実用化に向けた改良を行い、本システムの一層の普及、広報活動を図っていく必要がある。
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