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■事業の内容

国際海事機関(IMO)・危険物、固体貨物及びコンテナ小委員会(DSC小委員会)は、危険物及び固体ばら積み貨物等特殊貨物の海上運送に関する海上人命安全条約(SOLAS条約)第<6>章及び第<7>章に準拠したIMO・IMDGコード(国際海上危険物規程)及びIMO・BCコード(固体ばら積み貨物の安全実施規則)等について継続的に検討審議している。これらの条約及びコードの改正内容は国内関連規則に適宜採り入れられるため、審議内容について、詳細に検討する必要がある。従って、このDSC小委員会に対し我が国意見を集約し、また、現在問題となっている危険物等関連事案について適宜調査研究を行うことにより、積極的に我が国意見を反映させることが必要である。このような背景から、専門家による委員会を開催しわが国の意見の集約に協力する。また、専門家をDSC小委員会及び同作業部会へ派遣し、必要な情報を収集するとともに我が国の意見の反映を図ることを目的とする。
 また、荷崩れの危険性があるニッケル鉱を対象として「粘着性のばら積み貨物の安全運送に関する研究」を行い、海難防止を図るため、以下の事業を実施した。
 [1] 第1回IMO対応委員会において、本年度の検討事項について審議し下記事項を承認した。 
  [1] IMO対応委員会関係
    IMO「危険物、固体ばら積み貨物及びコンテナ小委員会(DSC小委員会)」で審議される危険物を含む貨物運送全般の事項に関する各国提案内容の検討、会議に対する意見の調整、国内外の関連資料の収集等を行う。また、IMO・DSC特殊貨物部会において実施する本年度の調査結果を検討する。
  [2] IMO・DSC特殊貨物部会関係
   a.DSC3(特殊貨物関係)提案文書及び審議事項について詳細に検討する。
   b.DSC2における我が国提案を含む継続審議事項について詳細に検討し対応する。
   c.「粘着性のばら積み貨物の安全運送に関する研究調査」を実施し結果をとりまとめIMO対応委員会に報告する。
  [3] IMO・DSC危険物部会関係
   a.DSC3(危険物関係)提案文書及び審議事項について詳細に検討する。
   b.DSC2からの継続審議事項について詳細に検討する。
 [2] 第1回IMO・DSC特殊貨物部会において、本年度の検討事項について審議し下記事項を了承した。
  [1] 「固体ばら積み貨物の液状化可能性」(DSC2/12/1)に関するフォローアップについて部会長、太田委員、田中(正)委員及び事務局にて検討すること。
  [2] 粘着性物質に関する本年度委託調査計画。
 [3] IMO・DSC編集・技術中間作業部会(E&Tグループ会合)出席
   IMO・DSC危険物部会本庄委員が出席した。
 [4] 現場試験(八戸及び日向)実施により、下記の成果が得られた。
  [1] 試料調整方法を含め、現場試験方法を概ね確立した。
  [2] 現場円錐貫入試験の解析方法を検討するための基礎的資料が得られた。
  [3] 円錐貫入試験においては、円錐形状、貫入速度、最大貫入深さを規定すれば試験装置によらず同じ試験結果が得られることを確認した。
  [4] 現場試験実施により、荷役現場用荷崩れ危険性の評価試験法について実験回数、データ解析方法及び締固め方法の検討が必要であることが確認された。
  [5] 現場試験結果を基に実験室円錐貫入試験方法を概ね確立した。
 [5] 第2回IMO・DSC特殊貨物部会において、粘着性ばら積み貨物の安全輸送に関する委託調査の進捗状況が確認され下記事項が了承された。
  [1] 荷役現場コーン貫入試験では、測定ポイントの締固めの方法を定める必要がある。
  [2] 最終目的は船舶の安全輸送であるので、現地において船サイドに試験を実施するよう要請することも今後検討する必要がある。
 [6] 第2回IMO対応委員会、第1回及び第2回IMO・DSC危険物部会並びに第3回IMO・DSC特殊貨物部会においてDSC3対応資料を作成し、これに基づき審議検討した。検討結果等を運輸省当局へ報告した。
 [7] 第3回DSC小委員会及びE&Tグループ会合出席
   第3回DSC小委員会へ浦委員長及び本庄委員が出席した。また、本庄委員がDSC小委員会に引き続き開催されたE&Tグループ会合に出席した。
 [8] 第3回IMO対応委員会(部会合同)において、DSC3及びE&Tグループ会合の結果が報告された。IMO・DSC小委員会等の動向を勘案し今後本委員会において次の事項について検討・審議する必要があることが確認された。また、本年度の報告書内容について検討し承認した。
  [1] 危険物関係
   a.新様式IMDGコードの容器包装仕様表(Packaging Instruction)
   b.隔離規定関連提案文書
   c.複合輸送における訓練要件のIMDGコードへの取り入れ
  [2] 特殊貨物関係
   a.液状化物質判別法に関する提案文書案の作成
   b.BCコードの改正(必要に応じて提案文書の作成)
   c.ばら積み貨物の密度計測の申請及び確認方法(必要に応じて提案文書の作成)
■事業の成果

[1] 第3回DSC小委員会対応関係
  [1] IMO・DSC3対応の検討
    本事業において、海上輸送に関する専門家による当会「IMO対応委員会」及び2の作業部会を設置し第3回IMO・DSC小委員会対応資料を作成し、内容について詳細に審議検討し我が国意見の集約に協力した。また、検討結果等を運輸省当局へ報告した。
  [2] IMO・DSC編集・技術中間作業部会(E&Tグループ会合)出席
    IMO・DSC危険物部会本庄委員が出席し、特殊貨物部会が準備・策定した「BCコード付録A改正」に関するドラフトについて説明し、一部修正された改正案をE&Tグループの報告としてDSC3へ提出することとなった。その他危険物関係の情報を収集し、我が国海上輸送関係官庁及び関係業界に貴重な情報を提供することができた。
  [3] 第3回DSC小委員会及びE&Tグループ会合出席
    第3回DSC小委員会へ浦委員長及び本庄委員が出席し、BCコード関連及び危険物関連の提案文書に関する我が国の意見を述べた。また、本庄委員がDSC小委員会に引き続き開催されたE&Tグループ会合に出席し、メインが危険物関係の同グループ作業に参加協力し国際的に貢献した。また、関連情報を収集し、我が国海上輸送関係官庁及び関係業界に貴重な情報を提供することができた。
 [2] 調査研究関係
   粘着性物質であるニッケル鉱は、水分値が一定の値を超えると荷崩れの危険性が急激に高まることが知られており、実際に我が国においてもニッケル鉱運送中のばら積み船の異常傾斜事例が報告されている。ニッケル鉱を安全に運送するためには、水分値の上限を決定する等、貨物が有する荷崩れの危険性を評価することが必要であるが、ニッケル鉱の荷崩れは液状化とは異なる現象であるため、液状化物質に対する運送許容水分値決定法は適用できず、未だ、貨物真相の実務に用いることのできる評価方法は開発されていない。
   安全輸送のため水分値の上限を決定するには、水分値を変えて貨物の剪断強度を計測し、得られた剪断強度を用いて荷崩れの可能性を評価すれば良い。ニッケル鉱等の粒状物質の剪断強度を計測する方法には、一面剪断試験や三軸圧縮試験といった実験室試験があるが、これらの試験は現場には適さず、また、かなりの時間を要することから、実際の船積み現場で用いることができる簡便な試験法の開発が求められている。
   本年度は、円錐貫入試験、一面剪断試験、試料の最大粒径と水分値の関係に関する試験及び荷崩れの数値解析を行うことにより、荷役現場における円錐貫入試験により荷崩れの危険性が評価できる試験法を概ね確立できた。また、次年度の研究において荷役現場用の試験方法は二種類想定すべきことが分かった。即ち、一つは、現場円錐貫入試験であり、この試験については締固め方法の定量化について研究する必要があることが分かっている。もう一つは、今年度実施した実験室円錐貫入試験のような試験を荷役現場で実施するものであり、この試験については粘着力を有する試料の篩い分け方法について研究する必要がある。試料によらない統一的な円錐貫入力のクライテリアの設定において問題の少ないと考えられる後者の試験方法を主として研究する予定である。
   これら本事業の国内外の活動は、結果として我が国の海上輸送の安全に貢献している。





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