■事業の内容
現在の東京湾6港における取扱貨物量は、全国の港湾取扱貨物量の2割に相当する約6億トンにのぼっており、湾内は、これらの貨物を輸送する多種多様な船舶で混雑している。 加えて近年、湾内航行船舶の大型化・深喫水化あるいは危険物搭載船が増加の傾向にあり、その間、船舶航行の安全を維持するため、海上交通安全法の施行・運用、航行安全指導・航行援助施設、システムの充実、待機錨地の整理、水先制度の改革など様々な調査・検討・施策により、湾内の船舶交通の整流化がためされてきているところである。 しかしながら、平成9年7月2日中ノ瀬西側海域において、大型タンカーによる乗揚事故が発生したことに鑑み、本調査・研究は、過去の検討結果を検証して、早急に実施または改善されるべき事項を検討し、同様な事故の再発防止に寄与することを目的として実施したものである。 [1] 検討会の開催 ┌──────┐ │第1回検討会│ └──────┘ 内 容 [1] 事業計画について [2] 東京湾における大型タンカーの航行安全対策について a.船舶交通環境および通航方式の現状について b.中ノ瀬西側海域における大型タンカー北航通航路の検討 c.その他 ┌──────┐ │第2回検討会│ └──────┘ 内 容 [1] 東京湾における大型タンカーの航行安全対策について a.巨大タンカーの操縦性等について b.中ノ瀬西側海域における航行基準進路(経路)の設定と航行の安全確保について a 中ノ瀬西側海域の航路標識・灯浮標の改善案について b 航海支援システム、航行支援体制について c 過去の航路体系、交通環境についての検討結果および中ノ瀬西側海域の航行方式の改善について d その他 施策の検討 c.その他 ┌──────┐ │第3回検討会│ └──────┘ 内 容 [1] 東京湾における大型タンカーの航行安全対策について a.水域環境(水域施設)の整備と今後の対応について b.巨大タンカーの操縦性等について c.中ノ瀬西側海域の航路標識・灯浮標の改善案について d.航海支援システム、航行支援体制について e.運航当直体制の充実について f.その他施策の検討 [2] 報告書目次(案)について [3] その他 [2] 現地調査 調査の項目および内容 船舶交通が輻輳すると共に複雑な交通流を形成する湾内交通環境下における大型タンカー受け入れに当っての航行上の安全確保と発災時の緊急初期対応をはかるに当って必要な航行支援等の航行安全諸対策について以下の調査・検討がためされた。 [1] 船舶交通環境および通航方式の現状 その後の調査検討を進める上の基礎資料として現状を整理した。 [2] 大型タンカーの操縦性能 巨大タンカーの操縦性、タンカー操船支援システム等について調査検討した。 上記[1]、[2]の資料を基に以下の調査検討がためされた。 [3] 中ノ瀬西側海域における航行方式の検討 ・大型タンカーの北航通航路について(灯浮標からの最小離隔距離の検討) ・当該大型タンカーの航行基準進路(経路)の設定、操船法と航行の安全確保について ・航路標識・灯浮標の改善案について ・過去にためされた東京湾における船舶航行の安全に関する調査研究事例の整理および航行方式の改善について [4] 航海支援システム、航行支援体制及び航行環境についての検討 ・航行船の横変位検出精度について ・船位検出と針路維持のための航海援助システムについて ・進路警戒船について ・外部からの操船支援情報の活用について ・水域環境(水域施設)の整備と今後の対応について [5] 運航当直体制の充実について 船橋における乗組員、水先人の業務体制充実についての確認がためされた。 [6] その他施策の検討 ・シングルハルタンカーの現状と操船面の制限について ・シングルハルタンカーに対する発災時の初期対応について ・シングルハルタンカーにおける水先人について [3] 報告書の作成 [1] 題 名 「東京湾における大型タンカーの航行安全対策に関する調査研究」 [2] 規 格 A4版 [3] 部 数 150部 [4] 配布先 委員、関係官庁、関係団体、教育機関等
■事業の成果
東京湾内海上交通の安全確保に必要な船舶航行環境の整備、すなわち船舶交通流の整備に寄与する交通体系と通航方式のあり方を中心とする航行安全対策の策定とその対応については、これまでも多くの調査研究が進められてきている。 しかしながら、東京湾内への大型タンカー受入に当っての、その航行水域、特に海上交通安全法施行規則に基づく中ノ瀬航路航行義務の適用外とされる喫水17mを超える大型タンカーの航行に供される中ノ瀬西側海域は、船舶交通の輻輳度が高いとともに、同海域西側は大型港域と直結し、これら湾域への入出港船舶の操船水域でもあり、漁業操業にも供される等、操船挙動の著しく異なる船舶間の競合の場となっており、その中での操縦性能の劣る操船上の制約の大きい大型タンカーの航行は極めて操船困難度が高い。 去る7月2日にはダイヤモンドグレース号の坐礁とこれに伴う他におよぼす影響度の高い油流出による二次災害を誘発する海難発生をもたらした。 このようなことから、本調査研究においては特に中ノ瀬西側海域における大型タンカー航行時の安全確保に中心を置き、その安全対策について調査検討した。 調査研究にあたっては、委員、関係官庁および関係者各位に多くの貴重な意見、指導、資料等をいただき、また、毎回の長時間にわたる検討会における活発な審議等がためされ、早急に実施または改善されるべき事項および今後の課題等が検討・整備された。 この調査検討結果は当該海域における事故の再発防止、船舶航行の安全確保のため、有用なものと考えられ、広く活用されるとともに今後更なる調査検討の基礎となるものと思われる。
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