■事業の内容
研修事業を適切かつ円滑に実施するとともに、過去の研修実績を今後の船舶ODAに役立てるため、過去15年間実施した研修を総合的に調査・検討する必要がある。 このため、帰国研修員の多い国を中心に計画的に本事業を行うこととし、現地調査により帰国研修員の実態及び活動状況を調査・検討し、今後の効果的な研修実施に役立てるとともに、セミナーを開催し、最新の技術情報を広く提供し、帰国研修員の技術指導を行う。また研修員のネットワークを構築して、情報交換及び友好関係の継続的な維持を図ることを目的として、次のとおり事業を実施した。 (国内作業) [1] 調査要領の検討 本事業調査要領の検討 研修員に対する質問状の送付 [2] 講師打合会の開催 [1] 第1回 平成9年4月4日(金) 議題 a.現地フォローアップ及び技術セミナーの日程について b.現地技術セミナーの内容及びテーマについて c.その他 [2] 第2回 平成9年4月21日(金) 議題 a.現地技術セミナーのテキストについて b.その他 [3] 第3回 平成9年8月11日(月) 議題 a.現地技術セミナーの評価について b.報告書検討について c.その他 [3] 技術セミナー資料作成及び購入 [1] 技術セミナー用作成資料 a.Quality Assurance b.New IMO Requirements: ・IMO Resolution MSC 66 ・IMO Resolution MSC 67 ・IMO Resolution A.744 (18) [2] 技術セミナー用購入資料 a.MARPOL 73/78 Consolidated Edition, 1991 b.MARPOL 73/78 1992 Amendments c.MARPOL 73/78 1994 and 1995 Amendments d.SOLAS Consolidated Edition 1997 (海外作業) [4] ネットワーク構築調査 帰国研修員及び関係者から日本における研修の評価・効果、研修員の定着状況、他国における研修状況、今後の研修のニーズ、不明帰国研修員に関する情報を聴取し、事前に取りまとめた情報とあわせて、帰国研修員の名簿を整理し、各地にそれぞれ同窓会を設立した。 [1] インドネシア国ジャカルタ a.平成9年5月12日 日本大使館訪問
国際協力事業団(JICA)ジャカルタ事務所訪問 運輸通信省海運総局(SEACOM)訪問 b.平成9年5月14日 コジャ・バハリ造船所訪問 [2] インドネシア国スラバヤ a.平成9年5月17日 スラバヤドック訪問 [3] フィリピン国マニラ a.平成9年5月20日 JICAマニラ事務所訪問 運輸通信省海事産業庁(MARINA)訪問 b.平成9年5月22日 バセコカーゴリフト造船所訪問 [5] 技術セミナーの開催 [1] インドネシア国ジャカルタ a.日時 平成9年5月13日 b.場所 サバン メトロポリタン ホテル c.講演内容 a 「1998年に実施予定の海上における人命のための国際条約(SOLAS)及び船舶による汚染の防止のための国際条約(MARPOL)の改正について」 b 「造船所における品質保証システム」 d.参加者 15名 [2] インドネシア国スラバヤ a.日時 平成9年5月16日 b.場所シェラトン スラバヤ ホテル c.講演内容 a 「1998年に実施予定の海上における人命のための国際条約(SOLAS)及び船舶による汚染の防止のための国際条約(MARPOL)の改正について」 b 「造船所における品質保証システム」 d.参加者 11名 [3] フィリピン国マニラ a.日時 平成9年5月20日 b.場所 NYK−FIL カサ マリネロ c.講演内容 a 「1998年に実施予定の海上における人命のための国際条約(SOLAS)及び船舶による汚染の防止のための国際条約(MARPOL)の改正について」 b 「造船所における品質保証システム」 d.参加者 20名 (国内作業) [6] 調査資料とりまとめ 現地調査及びアンケート調査(70人に対して実施)で得た情報を取りまとめ、OSCC同窓会名簿を作成した。 [7] 報告書作成 [1] 規 格 A4版 52頁 [2] 発行部数 100部
■事業の成果
[1] ネットワーク構築調査結果 帰国研修員に対するアンケート調査及び現地調査の結果は次のとおりである。 [1] 帰国後の活動状況 インドネシア国では、運輸通信省海運総局、工業省及び造船所の帰国研修員は、定年退職や移動で地方へ赴任した者を除き、ほとんどが現在も続けて同じ職場に勤務している。 フィリピン国では、海事産業庁の帰国研修員は、定年退職者や、外国へ移住した者もいるが、大部分は現在も同じ職場に勤務している。造船所に属していた帰国研修員は、造船所の統廃合により転職した者が多い。 両国とも、連絡の取れた者の大部分は帰国後夫々の職場で昇進し、管理職の地位についている者もおり、海事行政及び造船業の発展に貢献している。 [2] 参加した研修の評価・効果 OSCCで実施した「造船経営管理セミナー」、「船舶技術コース」、「船舶建造メンテナンス」及び「船舶安全・海洋汚染防止コース」のいずれも、帰国研修員の所属先からも帰国研修員自身からも、大変有益であったと高く評価されている。 研修項目では、造船所においては、経営管理、品質管理、船舶設計、船殻工作、安全管理等が、海運総局や海事産業庁では、船舶検査、安全体制、国際条約の解釈等が、実際の仕事に応用できてよかったと評価されている。 [3] 他国における研修状況 両国とも、日本での研修が一番多いが、スウェーデンの世界海事大学へ2年間職員を留学させている。その他、フィンランド、ノルウェー、ドイツ、オーストラリア等でも時々研修を受けさせている。 [4] 帰国研修員の要望 ・OSCCからもっと頻繁に情報を送ってほしい。 ・OSCCから定期的に技術情報を送ってほしい。 ・OSCCでさらに上級の研修を受けたい。 ・度々OSCC技術セミナーを開催してほしい。 ・OSCC帰国研修員の現状を知らせてほしい。 ・インターネットでOSCCホームページを開いてほしい。 ・OSCCのプロジェクトに参加したり、手伝う機会をあたえてほしい。 ・OSCC研修所で同窓会を開いてほしい。 [2] 技術セミナーの評価 今回、現地で開催した技術セミナーでは、「IMOの関連条約の改正」及び「造船所における品質保証」のテーマで、1998年に発効が予定されている国際海事機関(IMO)関係条約の改正の内容と、造船所での品質保証システムの内容を解説した。 参加者はそれぞれに大変興味を示し、講師が現地へ来てくれたことにより最新の情報を得られてよかったと高く評価した。即ち、今回の配布テキスト、特にSOLAS及びMARPOLの最新版は、大変貴重なものであり、日常の仕事に利用できるのでありがたいとの意見が多かった。 さらに、両国とも、国際標準企画ISO9000を取得する企業が激増しているが、品質保証活動(QA)の体制を整えることに主眼がおかれ、実施面では必ずしもうまく行っていないのが現状で、日本のQC/QAの原点である“現場重視・顧客優先”のやり方を大いに学ぶことができたとの意見が多く時機をえた話題であった。 今後も度々このような技術セミナーを開催してほしいとの要望が強かった。 [3] OSCC同窓会の設立 ジャカルタ、スラバヤ及びマニラにおいて、技術セミナーのあと同窓会を設立することができ、各地の同窓会で幹事が選出され、各国地区のOSCC同窓会の規約が定められた。 今回の訪問を機会に、長年音信不通であった研修員の消息が多くわかり、OSCC同窓会名簿を整備することができ、今後の研修員との連絡、情報の伝達が容易になった。
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