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第一章

グループホーム

スウェーデンのグループホーム

 

9ページのグラフからもわかるように、スウェーデンでは入所施設の閉鎖に反比例して、一般にグループホームと呼ばれる一般社会にまざった小規模な住まいがどんどん増えています。

ところで、スウェーデンでも以前は、このような住まいを英語のグループホームに当たるグループヘム(grupphem)といっていましたが、最近ではグループブースタッド(gruppbostad)という表現が主流になりました。二つの表現の間の違いを一口に言えば、前者が45人の人たちが共同で暮らすというニュアンスがあるのに対し、後者には45つの個人の独立した家がかたまって存在しているといった趣があります。

しかし、ここでは便宜上、日本でも定着している「グループホーム」という言い方を用いることにしました。

前にもふれたとおり、スウェーデンのグループホームは1960年代から始まり、この30年間に、より高い質を求めて発展してきました。住宅の質の向上には、この国が基本としている住宅政策、それに「社会サービス法」にある高齢者や身体障害者に配慮された住宅の規定が大きく影響しています。

今日スウェーデンで定義されている知的障害をもつ人たちのグループホームの条件は次のようなものです。

(1) 個人の住まいの空間は40m2以上であり、プライバシーを守れるように、ほかの人たちの住まいや共有の部分とは独立している。ドアには鍵があり、直接外部に出られる。

(2) 個人の住空間には、寝室、居間のほかに固有の台所とトイレット+浴室(またはシャワー)がある。

(3) (1)(2)に示したような個人の住居が4〜5戸合体し、その中央に共有の居間と食堂、オフィス+職員の宿直室、洗濯室、倉庫等がある。

(4) これら住居には、日常生活の介護、社会参加や余暇活動の援助をする職員が配置されている。職員の数やシフトは、住んでいる人たちのニードによって決められる。

(5) 住人に対しては、住居以外の場所での仕事、活動の場(主としてデイセンター)が保証されている。

(6) 住人は食費、日用経費、住宅費を自己負担とし、援助職員の人件費は公費(市町村の負担)でまかなっている。

ストックホルム市の発達障害児者地域援護局の専門チームに所属する心理士のラッシュモランデル(LarsMolander)さんの話では、ストックホルム市の各コミューンでは、すでに8085%が地域社会で生活しており、施設に入所している人たちは1520%程度であろうとのことでした。この施設も21世紀初めには閉鎖されることが決まっています。ストックホルムは大都市ですから、地価や不動産も高く、適当なグループホームを確保することはなかなか難しいそうです。大都会ですから、高層住宅の1ブロックを借りるような方法が多く、公営住宅も利用されています。それでも古い時代のものは手狭なものも多く、今後改善の余地があるとの話でした。

参考のためにストックホルムのグループホームに住んでいる人たちの平均的な家計をあげておきます。

 

 

 






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