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知的障害者福祉研究報告書
平成8年度調査報告


平成8年度 事業概要

春日台授産所(精神薄弱者授産施設)の概要

●施設概要

・春日台授産所は、知的障害者のため一般社会で働くことが困難なものを入所させ、生活指導を行い、作業指導による授産活動を通して入所者の諸能力の発達を促進し、自活能力の向上をめざすことを目的としている。
・平成7年10月より生活支援事業の指定を受け実施している。
・鉄筋コンクリート造平屋建
一部2階建(生活棟)
・入所定員  100名(男子40名・女子60名)
・入所資格  知的障害者で満18歳以上
ただし、15歳以上でも入所できる
・開  所  昭和46年7月1日
・入所期間  原則として入所期間は定めず、入所者の状態により決定する

●作業種目


●「春日台授産所」(精神薄弱者授産施設)の概要

〈利用者の特性〉
・入所定員は100名で、現在97名の利用がある。
・知的なレベルでは、軽度の人が10%程度、中度、重度の人がそれぞれ40%程度の構成になっている。
・平均の在所期間は14〜15年。長い人では開所以来という人も40人弱いる。
・県下全域からの利用がある。

〈年齢構成〉
・65歳の人(開所以来の入所者)が、最近まで入所していたが、特別養護老人ホームに移った。
年齢の平均は、男子が33〜34歳、女子が40歳弱である。

〈居室〉
・居室は、各部屋が4人づつで、1〜2階でそれぞれ8室がある。

〈作業種目〉
・ここに入所した人は、一番はじめに軽作業科に配属され、その後、他の科に移る。社会に出ていく人は、なるべく軽作業科から他の科に移して、いろいろな作業を通して、実習等を通して、社会へ出ていくことをめざしている。
各作業班は20名程度のグループに分かれて行っている。

・金工科では、当初は、ねじ切りなどの作業も行っていたが、できる人が少なくなってきたこともあり10年ほど前から運搬用一輪車の組立のみを行っている。

・ミシン縫製科の、ビニール袋の加工は、スポーツ用の衣類を入れる袋のホックをつける作業。以前は、動力ミシンで縫製作業も行っていたが、ミシン縫製そのものが下火になってきたということと、できる人が少なくなってきたということで現在は行っていない。

〈作業工賃について〉
・軽作業科、金工科、ミシン縫製科は、賃加工で行っている。
園芸科での作業は、自主生産、販売を行っている。

・作業工賃の支払いは、月に1回授産収入から必要経費12%を引いた額(88%)を分配している。今は収入が減っていて、4つの作業科目を合わせて、月に100万円弱程度の授産収入である。一人平均は、8,000円〜9,000円。それぞれの作業時間によって計算して、分配している。

〈生活施設として〉
・決められた生活日課についていけない人もいる。そのような人に対しては、緩やかな生活日課を設定して、新たにそのようなグループを設けるのがよいと思うのだが、所長、庁務員を除いて25名の職員体制では、難しい。

・個室がないために、ここでの生活の波に乗れない人は、きつい生活になる。
このようにプライベートの場を保障することができないので、自閉症の人などは特にきつい。それでパニックになると、それに反応してパニックを起こす人がでてくるという悪循環に陥る。

・家庭内での居場所をつくっておいてもらうために、家庭へ帰れる人は、家事実習・家庭療育という形で毎月1回家庭帰省を行っている。
家庭帰省の際に、みんなが帰れればよいのだが、帰れない人が2割強いる。

〈金銭管理について〉
・生活実習費として、年金からの10,000円と工賃を合わせた15,000円〜20,000円程度が本人が一ヶ月に自由に使えるお金になる。そのお金は買い物や外出の小遣いに当てられている。
買い物は春日井市が中心だが、名古屋に出たりもしている。買い物は主には衣類、CDやカセットなど好きなものを買っている。大きな買い物をするときなどは、職員と相談しながら調整してお金を使うようにしている。金銭管理は職員が行っている。

〈地域生活への状況〉
・社会に出ていける人は、なるべく出していきたいのだが、該当する人はなかなかいない。
重度の人が社会に出ていくことは、なかなか考えられない。中軽度の人については、社会に出ていける可能性はあると思うが、なかなか出ていけないのが現状である。

・生活支援事業は、退園生のアフターケアーが中心になっている。
・これまで男女合わせて、56名の人が退所している。このうち現在アフターケアーを行っている人が11名いる。

・退所した人達の状況は、男性4人のグループで近くの公団アパート借りて共同生活している人がいる。
女性では当初3人で民間のアパートを借りて共同生活をしていて、そのうちの1人が結婚して、今は2人で生活しているグループがある。
また、社宅で生活している人が2人いる。ひとり暮らしをしている人も1人いる。退園生でアフターケアーをしているのは、この11名である。

・自分の帰属性が確認できるかという問題、自分には帰る場所があるということが確認できるかどうかということが大きく本人のパーソナリティに影響を及ぼしてくる。


春 日 台 授 産 所 の 現 況(平成8年4月1日現在)



























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