日本財団 図書館


4.3.6 台風と長周期波

 

前項で、台風が遠隔にあっても、わが国の太平洋岸では長周期波の影響を受けていることを述べた。では、どのくらいの遠距離から影響を及ぼすのであろうか。勿論、それは台風の勢力(大きさと強さ)によって異なるであろう。ここでは、平成8年台風17号を中心に解析してみたい。

同台風は9月13日にフィリピン沖で台風となり、沖縄に接近し、北東に向きを変え、房総半島をかすめて北上し、北海道東部で温帯低気圧化した(図4-14)。最盛期には中心気圧が935hPa、暴風半径150kmと非常に強く、大型で強い状態を9月15日から22日までほぼ維持した。この間、日本列島各地に影響と災害を及ぼした。

図4-13の横軸に17号台風の中心位置からナウファス観測点までの距離を、縦軸に各観測点の長周期波エネルギーをプロットした。図中の日付は、9/13がフィリピン沖で台風化したときの各地からの距離に記し、9/25は千島沖に去った時の距離である。その間の記号は毎日09時の位置(距離)である。つまり、台風の接近と離去の伴う長周期波エネルギーの変動状況を表現している。

ところが、この期間には、東方には中型ながら18号台風が発生して北上を続けていたく(図4-14)。このために、解析にいくぶんかの混乱が生じた。

解析にとって幸いなことに、位置と日付から判断すると、中城・宮崎・室津はほぼ17号のみの影響である。これらを図4-13-上にまとめた。

中城は発生位置が近いことと、当初は発達程度が弱く、長周期波として影響がでるのは約500浬に北上・接近してからであり(発達も伴う)、最大値は再接近の240浬に出ている。台風が遠ざかるにうれ、長周期波波エネルギーは減少していくが、その影響は1000浬以遠でも読みとれる。

宮崎と室津はほぼ同様の傾向を示している。発生数日後に、800〜1000浬で影響が出始め、最高値は最接近の240〜300浬であり、北東に去るにつれ減少するが、影響は1000浬以遠まで認められる。

苫小牧、八戸、仙台新、鹿島(下図)は18号の影響を受けて、複雑な変動を示している。18号は中型ながら、先行している。つまり、観測点に先に接近して影響している。しかし、一歩譲って、仮に長周期波エネルギーが全て18号によるものとしても、影響が出ている9月15日の同台風からの距離は、鹿島で960浬、苫小牧で1300浬である。18号の影響が殆ど無くなった22日以降、17号は各観測点に接近し(200〜300浬)、それぞれ最高値を示している。衰弱しつつ離去するにつれ、影響は少なくなる。その影響距離は、苫小牧で約500浬、仙台新港で約700浬、八戸で800浬以上、鹿島港で1000浬以上と読みとれる。

結論として、大型で強い台風であれば、その影響による長周期波は約1000浬の海岸にまで達すると言えよう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION