を船籍港を管轄する登記所に移送することを要するのであり、当該船舶のその後における登記は、船籍港を管轄する登記所で取扱うのである(船登規則38条)。
第3項 船舶所有権移転の登記手続
1. 登記申請手続
(1) 申請人
船舶所有権移転の登記の申請人は、一般通則による(民法252条(共有物の管理)但書参照)。この場合の登記権利者は、所有権を取得した者であり、登記義務者は船舶登記簿面の所有権の登記名義人である。
(2) 申請書の記載事項
船舶所有権移転の登記申請書に記載すべき事項は、一般通則にしたがうほか、次の特則及び留意すべき事項がある。
(ア) 船舶が共有の場合の船舶管理人選任登記の表示(船登規則20条参照)
これを申請書に記載することを要する。
(イ) 所有権の一部の移転の場合のその部分の表示(船登規則1条、不登法39条ノ2)
これを申請書に記載することを要する。ここに所有権の一部移転とは、単独所有を共有となし、又は共有船舶の持分を移転することをいうものと解される。
(ウ) 会社等の法人に移転する場合の取締役等の全員の表示(船登規則19条1項)
当該船舶が日本船舶であることを証するために記載するものである。
(エ) 留意事項
? 船舶の表示 この記載事項は、当該船舶の登記簿上の記載事項と一致していることを要するから(船登規則1条、不登法49条5号)、船舶のこれら事項に変更を生じ、又は登記簿上の記載事項と一致しないときは、所有権移転の登記を申請する前提として、船舶の表示の変更又は更正の登記を申請することを要する(第3款参照)。
この前提登記をなすべき場合について特に問題となるのは、登記名義人の住所と登記簿上の船籍港とが同一市町村でない場合(たとえば、登記名義人が住所の変更登記をしたが、船籍港の変更登記をなさず放置しているとき、あるいは所有権移転の登記がなされた後、当該登記名義人が船籍港の変更登記をなさないときのごとき)に、船籍港の変更登記をなさずして(船籍港を引き続きその地に置く場合がある)他の登記を申請しうるか否かである。この場合、管海官庁において、すでに船舶の船籍港の変更登録をなしたものについては(管海官庁からその旨登記所に通知される。船舶法細則20条ノ2)、船籍港は実質的に変更されており、またそれにより登記の管轄権限の問題を生ずるから(同一登記所管内における船籍港変更は管轄権の問題を生じない)、船籍港の変更登記をなした後に、新船籍港の管轄登記所においてなすのでなければ、その他の登記はなし得ないものと解する(昭和32年3月27日民事局長通達民事甲598号参照)。