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承継取得の原因には、法律上移転する場合(相続による場合など)と当事者の意志表示による場合(契約による譲渡、免責委付(現行法削除)、保険委付など)とがある。

船舶所有者の喪失の原因には、船舶所有権が絶対的に消滅する場合の原因(船舶の滅失など)と相対的に消滅する場合の原因(甲から乙に移転する場合の甲の所有権の喪失のごとく)とがある。

 

2. 船舶所有権の登記と船舶国籍証書との関係

日本船舶であって、船舶登記制度が適用せられる船舶は、登記をなした後、船籍港を管轄する管海官庁に備えた船舶原簿に登録をなし、船舶国籍証書の交付を受けることを要し、またその後でなければ航行させることができない(法5条、法6条、商法686条1項)。

さらに、船舶所有権の移転は、その登記をなし、かつ、船舶国籍証書にこれを記載するのでなければ第三者に対抗することができず(商法687条)、また、所有者の変更登録をなし、船舶国籍証書の書換を申請した後でなければ船舶を航行させることができない(法6条ノ2、10条)。

したがって、船舶の所有権の登記は、船舶の登録、すなわち、船舶国籍証書と密接不可分の関係にあり、不動産登記などにはみられない特質を有する。

 

3. 船舶所有権の移転の対抗要件

船舶所有権の原始取得については、登簿船たると不登簿船たるとを問わず、対抗要件(注)を要せずして第三者に対抗することができる。そして、船舶は動産であるから、未登記の船舶の所有権移転の対抗要件は、その引渡であって(民法178条)、不動産のごとく、その所有権保存の登記が承継取得の第三者対抗要件となるものではない(民法177条、商法687条参照)。

しかし、所有権の保存登記がなされた船舶は、法律上不動産と同様な取扱を受け、その権利の得喪及び変更は、登記しなければ第三者に対抗することができないものとされるのである。さらに船舶所有権の移転の対抗要件としては、登記のほか船舶国籍証書の書換をも要することは前述のとおりである。

(注) 対抗要件とは、すでに成立した権利関係を他人に対して主張するための法律要件であって、対抗要件の具備により発生する対抗力は、主として当事者間に効力を生じた権利関係を第三者に主張する場合に用いられるものである。わが国においては、登記により対抗力は賦与されるが、登記の公言力、すなわち、登記があるときは、偶々これに対応する実質関係がなくても、登記を信頼した第三者の利益のために、登記のとおりの実質関係が存在するものとみなすという法律的効力は、認められていない。

 

第2項 船舶所有権保存の登記手続

船舶所有権保存の登記は、未登記の船舶につき、船舶登記簿に新たに登記用紙を設けることにより当該船舶を船舶登記簿上確定するものであり、その後この保存登記を基礎として、その船舶に関する権利変動の登記がなされるのである。したがって、船舶所有権保存の登記については、当該船舶の同一性及び所有権の帰属関係を確認することが必要であり、その手続が定められている。

 

 

 

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