日本財団 図書館


2. 日本船舶たる要件は、船舶の所有権が、船舶法第1条に掲げる自然人又は法人に在ることをもって足り、当該所有者が本来の航行の用に供する者であるか否かを問わないものと解する。船舶が建造される場合には、注文者に引渡されるまでは、造船者が所有権を有するのが通例(造船契約の内容により異なるが)である(注2)。したがって輸出船舶のごときものでも、外国の注文者に引渡されるまでの間は、日本船舶であることがあり、海事公法の適用を受ける場合がある。

(注1) 外国資本の導入により、株式会社の取締役には外国人が就任するものが見受けられるが、この場合、会社の所有船舶は日本船舶たりえないから、外国の国籍を取得するか、取締役の更迭を行う以外に方法はない。

(注2) 造船契約には、注文者が全部又は大部分の造船材料を供給する場合(現在この方法はほとんど行われない)と、造船者が全部又は大部分の造船材料を供給する場合がある。前者は請負契約であり、後者は仕事完成の義務と船舶所有権の移転の義務とを含むものであり、請負と売買の混合契約であると解されている。造船契約には、形式の制限はないが、大型船舶の建造については複雑な設計を必要とし、価額も大であるから、通常詳細な内容の契約書が作成される。

 

第2款 日本船舶の特権及び義務

日本船舶は、次のような種々の特権及び義務を有する。

 

1. 日本船舶の特権

(1) 日本の国旗を掲揚することができる(法2条)。国際法上、国旗の掲揚はその国の国籍をその船舶が有することを推定させる効果を有するものである。

日本船舶でないものは、国籍を詐る目的をもって日本の国旗を掲揚したときは、捕獲を避ける目的をもってしたときを除き、船長は2年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられ、また、船長の所有又は占有に係るその船舶は没収されることがある(法22条1項、2項)。国籍を詐る目的でなくして自国の国旗以外の旗章を掲揚した場合には、罪に問われない。したがって、外国船舶がわが国に敬意を表するため日章旗を掲揚し、又は日本船舶が外国の祝日等に当り、その所在国の旗章を掲揚すること等はなしうる。また、捕獲を避ける目的とは、敵の捕獲をのがれ、あるいは交戦国の権を行わんとする外国軍艦の捕獲をまぬがれようとする目的をいうのであり、このような場合は、重大な結果を生ずべきものではないから、罰則の適用は除外される。

(2) 不開港場に寄港し、又は日本各港の間において物品又は旅客を運送することができる(法3条本文)。わが国の海運の保護及び国防等の観点から、外国船舶に対しては制限するのである。不開港場(不開港)とは、開港(外国通商を許される港であり、関税法で定められているが、一定の事由があるときは開港でなくなる。開港の港域は原則として港則法の定めるところによる。関

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION