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第2節 船舶の概念及び分類

 

第1款 船舶の意義

船舶法は、船舶自体に関する法律であるから、まず船舶の意義を明らかにしなければならない。船舶法は、船舶の定義を定めていないが、船舶の国籍に関する規定の趣旨及び第20条に掲げる小型船舶の例示からみて、社会通念上の船舶をさすものと解する。ただし、船舶法施行細則第2条の例外がある。すなわち、船舶法上の船舶とは、水を航行する用途及び能力を有する一定の構造物であって、そのうち、推進器を有しない浚渫船等を除いたものということができる。

(1) 水を航行するものである。水を航行する限り、その水面なると水中なるとを問わない。飛行船や水上飛行機のごときは、主として空中飛行の目的をもって造られたものであるから船舶ではない。

(2) 航行の用途及び能力を有するものである。したがって、一つの場所に固定するもの、たとえば浮標、浮ドック、浮ホテルなどは船舶ではない。これに対して、浚渫船、燈船、起重機船などはこの要件を充すものであり、社会通念上の船舶である(注1)と解する。しかし、これらの船舶は、推進器を有しない限り船舶法上の船舶ではない(注)(細則2条)。なお、ここにいう航行の能力は、機械力あるいは自力によって航行する能力のみをさすものではないのであって、櫓櫂船や独航機能を有しない艀(被曳船)なども船舶である。

(3) 一定の構造物である。すなわち、材料及び構造の如何を問わないが、浮揚性を有する凹型状態をそなえることを要する。したがって、水上スキー等は船舶ではない。筏は、この要件をそなえず、また構成する物自体の運送を目的とするものであるから船舶ではない。

(4) 製造中の船舶は、一般的には、現に航行の用途及び能力を有するものではないから、船舶ではない(商法851条参照)。問題となるのは、製造が完成したときに初めて船舶といいうるか、あるいは工事の進行の程度によっては船舶といいうるかの点であるが、進水後は船舶法上においても船舶として取扱うべきものと解する(注3)。

引揚不能の沈没船や救助不能の難破船は、前記の要件を失うものであるから、同じく船舶ではない。ただし、これらのものは、法律上特定の目的の範囲内で船舶として取扱われることがある(商法690条、833条)。

(注1) 浚渫船、燈船等については、学説が分れている。

(イ) これらのものは、水上において特定の作業に従事することを目的とするものであるが、なお航行の用途及び能力を有するものといいうるし、また、船舶法施行細則第2条は「……船舶ト看倣サス」と規定する。

(ロ) 推進器を有しない浚渫船は主として港内において操業しており、港外に出ても港の周辺を浚渫するもので、外洋(沿海以遠)に出ることは全くないと言ってよい。そこで、このような実態にある船舶には船舶法第1条〜第3条の規定を積極的に適用除外しようとしたのが船舶法第20条を置いた上で更に施行細則第2条を置いた理由であるとする考え方もある。

 

 

 

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