3.3 バンコク港
(1)港の概要
バンコク港は、昔は満潮時においても航路水深がわずか-4.5m〜-4.8mしかなかったため、小型船か喫水の浅い船しか入港できなかった。喫水の大きな船はバンコクから80km離れたSi Chang島の沖合の泊地で艀荷役を行っていた。このため、時間のロスとコスト高が大きな問題であった。
現在の形の港の開発は1932年に遡る。当時の国防大臣がChao Phraya川の河口の砂州を浚渫し、既存の港に大型船が直接入港できるように改良することを提案した。1934年、調査の結果、河口の砂州を浚渫しKlong Toeyに近代的な港を建設することが決まった。
港の建設は1938年バンコク港湾事務所を設置して開始された。第二次世界大戦中は中断したが、戦後完成した。当時の港湾施設は、バース長1,500m、平屋建て上屋4棟、3階建て倉庫1棟、3階建て管理棟1棟、鉄道引込線、道路、運河等であった。
1951年には政府は世界銀行の融資を受け、砂州の浚渫、バンコク川の増深、荷役機械の調達を行った。そしてその年、前項で述べたPATが設立された。
(2)港の位置
バンコク港は、Chao Phraya川を遡った+26km〜+29kmの地点の左岸、バンコク市のKlongtoey地区に位置している。
バンコク港の陸域面積は約900エーカで、そこに埠頭、上屋、倉庫、野積場、管理ビル等の港湾施設が立地している。公社が管理する港湾区域の海域は、Chao Phraya川に架かるMemorial Bridgeの下流域からタイ湾内の沖合-18kmまで全長57kmの水域である。図3-1に港の位置図を、図3-2に東埠頭(コンテナターミナル)の平面図を示す。
港への進入は延長18kmのBar Channel航路を通航する。航路幅は直線部で100m、屈曲部で250mである。航路水深は-8.5m(MSL:Mean Sea Level)に維持浚渫されている。港湾区域内における河川の水深は-8.5m〜-11.0m(MSL)である。
バンコク港は河川港であるため入港船舶に制限が設けられており、最大船型は船長172m、喫水8.2mである。船長50m以上の船舶は強制パイロットの乗船が必要となっている。パイロット料金は運輸通信省港湾局の監督下にある。
(3)入港船舶数
アジア地域そしてタイ国経済の減速の影響を受け、PATが管理運営するバンコク港とレムチャバン港への1996年の入港船舶数は減少した。
バンコク港における1996年の入港船舶数は2,341隻で1995年に比べて238隻、率にして9.23%減少した(表3-2)。