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7.1.2 バイオレメディエーションの適用について

 

(1)バイオレメディエーションの適用時期

ナホトカ号の事故のような難分解性のC重油が漂着した場合に、バイオレメディエーションを適用しても、なかなか効果は現れにくい。従って、物理的回収では回収しきれない油がバイオレメディエーションの対象となる。具体的には、石や砂利に付着している油や海水面上にキラキラ浮いている油が処理の対象となる(ちなみに、洋上での回収船による物理的回収は10〜13%が限度)。

石ころなどに付着した油を高圧水などで洗浄する方法もあるが、この方法は、その海岸地域の生態系をこわす恐れがあることが、過去の事例から指摘されており、望ましい方法ではないと考えられる。

いつ、物理的回収が終了するかは、現場の専門家に委ねられる。

 

(2)利用する微生物

原油漂着現場に原油分解微生物が生息する場合には、地場の微生物を利用することが考えられる。この場合、予め海水中の栄養塩のバックグランドを測定して、過剰にならない程度の栄養塩を散布する。過剰に散布した場合、富栄養化などの別の悪影響が予測される。

本研究では、地場の微生物よりも原油分解率の高い原油分解菌を散布することで、より早期の環境浄化を目指した。この原油分解菌は好適な条件を維持すれば、数日間の内に108cells/mLのオーダーにまで増殖する。

ただし、試験結果からは、原油分解菌を添加した場合、天然の微生物を利用する場合と比較して初期(1週間)に菌密度が高くなるが、その後は、菌密度に差はみられない。結果として、所定期間後の油分解率は、天然海水を利用した場合と同程度となった。

従って、まず地場の微生物を利用することであり、さらにこれよりも効果の望める微生物を利用できればそれを散布するのが望ましい。

原油分解菌を散布するには、2つの方法があると考えられる。1つは、予め原油分解菌を培養し、船や陸などから原油分解菌を含む海水をポンプなどで散布する方法である。もう1つは、凍結乾燥した粉末の菌体を栄養塩と一緒に噴霧する(現場の海水とその場で混ぜてもよい)方法がある(例えば、米国のオッペンハイマーバイオテクノロジー社の微生物製剤)。

 

(3)栄養塩などの散布方法

?散布する栄養塩

栄養塩の種類としては、速効性のある栄養塩(液状)と効果が持続する緩効性の栄養塩(粒状)が存在する。バイオレメディエーションの適用に当たっては、状況に応じてこれらを選択することが望ましいと考えられる。事実、アラスカでのExxon Veldez号の事故時に使用されたのは、速効性のあるフランスのelf社の液状の親油性の栄養塩Inipol EAP22と米国Grace Sierra Chemicals社製の緩効性の栄養

 

 

 

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