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は じ め に

 

本報告書は、競艇公益資金による日本財団の平成7〜9年度補助事業として実施した「海洋微生物による流出油処理に関する調査研究」事業の成果をとりまとめたものである。

石油は生活必需品として不可欠なものであり、製油所に至る大半の石油は海上輸送されており、また臨海の製油所や備蓄基地に貯蔵されている。輸送上での座礁、衝突等の海難事故や製油所等における事故による流出油は、海岸や沿岸部に大きな影響を及ぼすことになり、地球環境問題の一環としても流出油の処理対策は重要な問題である。特に、近年船舶や貯蔵タンクの大型化にともなう流出規模の拡大に対して、既存の手段では効果的な処理対策ができない面が多くなってきている。

流出油処理技術として、従来の油防除機材や付着機材に加えて、石油分解微生物を利用した浄化技術、すなわち、バイオレメディエーション(Bioremediation)が世界的に注目されている。

本事業は、流出油処理に関して最適な処理法を策定するために、将来有望なバイオレメディエーションについて、平成7〜8年度は、国内外の現状の成果及び研究・実用化動向を把握するとともに、実験室での予備試験(フラスコ試験及びカラム試験)の実施、並びに流出油処理効果シミュレーションモデルの構築を行った。最終年度の平成9年度には、より実海浜に近い条件下での試験を行うため、海浜模擬実験装置を使用した実用化試験を実施してデータを取得し、流出油処理効果シミュレーションとの比較検討を行い、シミュレーションによるバイオレメディエーションを用いた費用対効果を評価した。

その結果、バイオレメディエーションは修復に多少の時間を要するが効果的な処理方法であることが明らかとなり、今後その実用化に向けた環境整備が望まれる。

本事業は、信州大学 児玉徹教授(東京大学名誉教授)を委員長とする「海洋微生物による流出油処理に関する調査研究委員会」の各委員の熱心なご審議による他、運輸省のご指導及び株式会社三菱総合研究所をはじめ、多くの方々のご協力により実施されたものであり、これらの方々に対して心から感謝の意を表する次第である。

 

平成10年9月

 

財団法人シップ・アンド・オーシャン財団

会  長     今  市  憲  作

 

 

 

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